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北朝鮮は外貨稼ぎの一環で、アフリカのタンザニアに医師を派遣している。しかし、医師らはインチキ治療を行うなどして、頻繁にトラブルを起こし、現地メディアから厳しく追及、批判され、政府当局の制裁を受けるなど、決して評判が良くない。

それにもかかわらず、同国のある大学病院が北朝鮮の医師を多数雇い入れる計画が明らかになった。そこには背に腹は代えられぬタンザニア側の事情があった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

医師を雇い入れる大学は、最大都市ダル・エス・サラームの近郊にあるカンパラ国際大学。カンパラとはタンザニアの隣国、ウガンダの首都でありその名が示すとおりウガンダの大学だ。2009年にダル・エス・サラームキャンパスが開設された。

ウガンダの現地情報筋によると、同校は小さなクリニックを併設しており、これを病床数が1000床にのぼる総合病院にするプロジェクトを進めているという。

病院は今年6月に完成、開業する予定だが、医師が思うように集まらず、キューバ、パキスタンに加え、北朝鮮からも医師を招くこととなった。北朝鮮の医師は内科、外科、小児科、放射能科を受け持つ予定。正確な人数はわかっていないが、30人以上になるものと思われる。

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今回派遣される医師の素性はわかっていないが、北朝鮮の医師は今までタンザニアでインチキ治療をするなど、様々な問題を引き起こしている。

昨年1月には、北朝鮮の医師がハーバリスト(伝統医学の医師)と共謀して、「量子共鳴磁場分析器」(Quantum Resonance Magnetic Analyzer、QRMA)なる機器を利用し、患者の「診察」を行った上で、高価な薬を売りつけた。これに対して、タンザニア当局は取り締まりに乗り出し、北朝鮮系のクリニックに対して閉鎖命令を下した。

また、ひどい咳に悩まされていた19歳の青年が、北朝鮮系クリニックでお灸とカッピング(吸い玉)療法を施され、正体不明の北朝鮮製の薬を処方された。しかし、病状は一向によくならず別の病院に行ったところ、結核と診断されたという。青年の父親は激怒し、このクリニックを告訴する方針だと伝えられている。

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悪評にもかかわらず、北朝鮮から医師を招く背景には、タンザニアが深刻な医師不足に陥っていることがある。

タンザニアの医師1人あたりの住民数は3万人で、WHOが推奨する1000人の30倍に達している。

同国の「シティズン」紙によると、タンザニア医師会とNGOの調査結果を引用し、同国で登録された医師の8.2パーセントが海外に居住している。医師1人を教育するのに最高で6万ドル(約682万円)かかるが、国費を投じて育てた年間200人近い医師が、大学卒業後すぐに海外に行ってしまうのだ。

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その理由は低賃金だ。タンザニアの医師の平均月給は100万タンザニア・シリング(約5万円)で、隣国ケニアの16万5000ケニア・シリング(約17万9000円)の3分の1以下の水準だ。

ロイター通信によると、医師たちは2012年、給与を350万タンザニア・シリング(約17万5000円)に引き上げることを求めてストを行なった。しかし、政府の提示した額はわずか120万タンザニア・シリング(約6万円)だった。

そればかりか、キクウェテ大統領は治安部隊に命じて、ストを主導したタンザニア医師会のスティーブン・ウリンボカ会長を誘拐、拷問させたとの疑惑が浮上した。

タンザニア人の医師が多く働く隣国、ウガンダの状況も、似たり寄ったりだ。平均月給は200万ウガンダ・シリング(約6万3000円)だが、現地の新聞「デイリー・モニター」の2013年の記事によると、同国で登録された医師4200人のうち、約2000人が海外の病院で勤務している。

ウガンダのムセベニ大統領は医師らの賃上げ要求を拒否し続けていることもあり、年間320人誕生する医師のほとんどが、すぐに海外に行ってしまうという。医師1人あたりの住民数は2万4725人だ。

医師不足に悩まされるウガンダだが、その一方で外務省は医師たちに外国での就職を斡旋しており、同国の医療保険政策の迷走ぶりがうかがえる。