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昨年8月に北朝鮮北東部を襲った台風10号(ライオンロック)により、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)市は甚大な被害を受けた。

中には、地域全体が増水した川の水に飲み込まれ、流されてしまった村もある。しかし、北朝鮮当局は被災地を復興しようとしていない。その理由を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

製紙工場、建材工場、協同農場、金正日氏の母親である金正淑(キム・ジョンスク)氏が利用していた船着き場と革命史跡記念碑などがあった会寧市の望陽洞(マンヤンドン)。この地域は、昨年8月末の洪水で一面泥の海と化してしまった。

また、江岸洞(カンアンドン)に至ってはすべての住宅、公共施設が流され、人口1000人のうち、200人が死亡または行方不明となった。

ところが、これら地域の復興作業が行われていないことが、衛星写真で確認された。

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現地の事情に明るい脱北者は語る。

「これらの地域には400から500戸の家があったが、洪水ですべて流された。北朝鮮当局からすると、願ったり叶ったりだ」

国境を流れる豆満江(トゥマンガン)に面した望陽洞、江岸洞は、脱北を試みる人々にとって絶好のアジトとなっていた。また、住民自身が出稼ぎや密輸で頻繁に脱北を行なっていた。

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脱北の根絶を目指す金正恩党委員長にとっては、目の上のたんこぶのようなところだった。そこが、洪水で流されてしまったのだ。

一方で当局は、これら地域から南東に離れた場所に、少なくとも55棟のマンションを建設した。元の地域は復興せず、住民を強制移住させる方針であるようだ。

会寧のみならず、茂山(ムサン)、穏城(オンソン)などでも、洪水で完全に流されてしまった地域があるが、同様の強制移住策が取られている可能性がある。

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RFAは「今後、脱北が困難になると思われる」と伝えている。しかし、脱北のポイントは他にも多くある上に、密輸や脱北幇助が地域経済に取り込まれている現状を考えると、一時的に減ることはあっても完全になくなることはないだろう。