北朝鮮政府が30日午前11時に貨幤改革を電撃的に断行し、北朝鮮内部が大きな混乱に陥っていると伝わった。北朝鮮の人民保安省が総動員されて住民の統制に乗り出し、国家安全保衛部や保衛司令部、軍の部隊にまで非常待機令が発令された。
今回の貨幤交換は旧札と新札の価値の比率が「100対1」だが、1世帯が交換できる限度額は北朝鮮の貨幣1千ウォンまでだという。これは北朝鮮の既存の貨幤10万ウォンに相当する金額である。10万ウォンを上回る分は、新札への交換が不可能になるという。
この日、咸鏡北道では午前8時30分頃に、市や郡の機関長や初級党書記の会議が開かれ、その場で貨幤交換に対する方針が伝達された。
さらに、午前11時から人民保安署の保安員や各部門の監視隊員が通りに出て住民の監視を開始し、正午からは軍部隊に非常待機令が発令された。この日午前に緊急召集された人民班会議や工場の企業所の講演会では、「夜10時以降の移動を禁じて、規定に違反した者を厳しく取り締まる」という内容も伝えられた。
咸鏡北道では数日前から、「間もなく貨幤改革が実施されるようだ」といううわさが流れていたが、普段こうしたうわさをしばしば聞いていた住民の多くは、あまり気にとめていなかったという。
人気記事：「女性１６人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面この消息筋は「貨幤交換をすると言っても、こんなに野蛮にするとは、夢にも思わなかった」と打ち明けた。
また、「朝鮮（北朝鮮）の貨幣10万ウォンは、市場で米を半キロ（500g)買うお金にしかならない」と言い、「これまで汗水たらして貯めたお金が全て水になった」と興奮気味に伝えてきた。
これは、現在北朝鮮の市場の米の価格は2千ウォン台前半だが、旧札の10万ウォンを新札の1千ウォンと交換したら価値が無くなってしまうという意味だ。
人気記事：「女性１６人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面両江道恵山市では、午前8時（北朝鮮の出勤時間は朝8時）に機関長の非常会議が召集され、すべての機関長や初級党書記が集まる午前9時から、恵山市の警備を担当している人民保安署の保安員の警護の下、貨幤改革の方針が伝えられた。
恵山市の党責任書記は貨幤の交換について通知し、交換の原則と方法、貨幤交換の過程で起きる可能性がある住民の混乱に徹底的に対処することなどについて1時間ほど講演した。
両江道の消息筋は「貨幤交換の消息を伝える党責任書記も憂鬱そうな撫??ｵていたし、会議場は沈痛な雰囲気だった」と言い、「会議に参加した女性機関長の中には、気が抜けたような顔をして涙を流す人もいた」と伝えた。
人気記事：「女性１６人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面工場の企業所に戻った機関長たちは、すぐに労働者を集めて緊急会議を開き、貨幤交換の消息を伝えたという。会議では「今回の貨幤交換と関連した住民の動向を全て報告することになったので、言葉と行動に特に気を付けなさい」という指針が下った。
同じ時刻、恵山市人民委員会の会議室には洞事務所（役場）の所長や人民班長が集まり、人民委員会の幹部から貨幤交換の指針について聞いていた。
午前11時からは人民保安署の保安員や各部門の監視隊、国家安全保衛部の指導員が市内で巡察業務を開始し、正午頃からはトラックに乗った軍人が移動する姿が恵山市内でも目撃された。
恵山市場に貨幤改革の消息が初めて伝わったのは10時15分頃。20代中盤のある女性が、生活必需品の売台に駆けつけて来て、11時から「貨幤交換」が予定されていて、交換できる限度額は「世帯当り10万ウォン」という事実を初めて伝えたという。
消息を聞いた市場の商人や行商人たちが女性を取り囲んだが、誰もが信じられないと言っていたそうだ。「10万ウォン以上の貨幣は全て無効にする」という女性の言葉に、「気が違ったのか」と言うお年寄りもいたそうだ。
だが、10時40分頃に恵山市場の管理所長が市場の入口に出て来て、「間もなく貨幤の交換があるから、全員各自の企業所と人民班に戻り、上から下った指示に従いなさい」と伝えた。
貨幤改革が既成事実であることが分かり、あっけに取られていた人たちの中から、涙まじりの憤りの声がもれ始めた。
消息筋は「商売をしていた女性たちが髪の毛を掻きむしりながら慟哭して、あちらこちらで人が気を失って倒れた」と言い、「食糧の売台にいたある女性は、その場で気を失った」と伝えた。
また、「商人の中には中国のお金をたくさん持っている人もいたが、米商人たちは全員、うちのお金（北朝鮮の貨幤)で値段を計算するため、ほとんどの人がうちのお金をたくさん持っていた」と言い、「そのためその人たちが受けた衝撃は一層大きなものだっただろう」と付け足した。
北朝鮮政府は「首領様（金日成氏）の肖像画があるお金を毀損する行為は逆賊として扱う」と言い、住民たちが反抗心から古い貨幤を破ったりしないように備えていることも分かった。
新義州の消息筋は「家から放心状態に陥った住民の泣き声が聞こえて来て止まず、夫婦喧嘩をしている家も多い」と言い、「担当の保安員や保衛指導員が喧嘩をしていたり騷がしい家にやって来て戸を叩いているが、答える人もいない」と現地の様子を伝えた。
この消息筋は「今回の貨幤交換は本当にものすごい詐汲ｾ」と言い、「首領様（金日成氏）の逝去の後、みんなが道に座り込んで泣きわめくのは今回が初めて」と話した。
一方、咸鏡北道会寧市のカンアン洞からは、塩辛を売っていた60代の夫婦が、貨幤交換の消息を聞いて悲観して首をつり、自殺したという悲報も伝わった。この地域の人民保安署は、住民の動揺が高まるのではないかと緊張していると咸鏡北道の消息筋は話した。