北朝鮮の農作物の生育状況が良好であることが明らかになった。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、大雨や病虫害などの被害がなければ、豊作が期待できるという。
RFAの両江道(リャンガンド)の農業関係者は、「今年は化学肥料が潤沢に供給されている。下肥(人間の糞尿から作った肥料)も必要ない」と語った。
化学肥料の生産が順調な理由は、昨年輸入した原油を原料に、興南肥料連合企業所、2.8ビナロン工場などで130万トン以上が生産できたからだ。北朝鮮で1年間に必要な肥料の量は155万トン。つまり、ほとんどを国内生産でまかなえる計算だ。
各協同農場では、1回目の施肥(肥料やり)を問題なく終え、7月10日から始まる2回目の分も倉庫に充分あるとのことだ。また、市場でも安価な国産の化学肥料が多く売られている。
窒素肥料は1キロ1000北朝鮮ウォン(約13円)、尿素肥料は800北朝鮮ウォン(約10.4円)だ。これまでは、1キロあたり1400北朝鮮ウォン(約18.2円)の中国製の複合肥料しか選択肢がなかった。高価なことから、作況に悪影響を及ぼしていた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面さらに、今年は、例年より春の気温が高く、降水量が多かったことも作況が順調な理由。台風の発生が記録的に少ないことも、北朝鮮農業には「天の助け」となっている。
一方、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋は、「楽観視は禁物だ」と慎重に見ている。
まず、北上中の梅雨前線の活動が活発であることが気がかりだ。北朝鮮の穀倉地帯、黄海道(ファンヘド)では7日にかけて大雨が予想されている。防災インフラが整っていないため、日本や韓国では全く被害が出ないほどの雨でも、北朝鮮では壊滅的な被害をもたらす恐れがある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、雨が頻繁に降り、気温が高いため、ジャガイモや小麦に影響を与える黒穂病やテントウムシダマシなどの病虫害が蔓延していることも気がかりだ。農薬を散布しようにも、雨の日が多くて日取りを定めされずにいるという。
さらに、農薬の供給量が足りていないのも、もう一つのリスク要因といえる。協同農場の作業班、分組が自費で市場で購入せざるを得ず、予算不足で散布量が減り、収穫量が減ることも予想される。
今年、豊作になったとしても、農業インフラの整備を進めなければ、一気に食糧不足に陥りかねない綱渡りの状況にあるのは変わりはない。