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中国当局が複数の日本人を「スパイ容疑」で拘束している事実が明らかになり、1ヶ月が経った。マスコミはすでに関心を失ってしまったのか、報道は沙汰止み状態である。彼らに情報収集を依頼していた公安調査庁は、息を殺して事件が忘れられるのを待っていることだろう。

この事件およびその背景の報道に、マスコミはもっと粘り強く取り組むべきだと思う。なぜならこの出来事のせいで、日本の中国に対する情報活動は、痛烈な打撃を受けてしまったからだ。

公安調査庁は今回の事件を受けて、中国現地での情報活動をほとんど止めてしまったと言われている。

事件を報じたメディアの中には、公安調査庁が協力者に依頼して行っている情報活動について「レベルが低い」「素人同然」などと書くものがあった。しかしそもそも、中国現地で情報活動を行える人材や組織は日本にはほとんどない。協力者にそれを依頼できない事態になった今、日本政府は中国の軍事施設や中朝国境地帯の写真や映像すら見ないまま情勢判断を下さねばならないのだ。

中国当局からすれば、実に簡単に日本の情報活動をつぶせたことになる。

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もっとも、こうした出来事はこれが初めてではない。

公安調査庁にもかつて、「この人あり」と言われたエリート公安調査官がいた。北朝鮮情報で右に出る者なしとまで言われ、CIA(米中央情報局)など海外の諜報コミュニティーからも一目置かれる存在だった。

そんな彼の立場が、2001年12月に発生した北朝鮮工作船事件を境に暗転する。捜査の過程で、この調査官と北朝鮮の工作員、そして北朝鮮と覚せい剤取引を行っていた暴力団関係者の接点が浮上。さらには彼が北朝鮮側から情報を引き出すのと引き換えに、日本側の情報を提供していた疑惑さえ噴出した。

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慌てふためいた公安調査庁は彼を地方に飛ばした上、飼殺しにしてしまったのである。

しかし、それで公安調査庁という組織は守られたかもしれないが、対北情報活動にとっては損失も大きかったはずだ。

人間と人間の接触の中で情報を引き出すHUMINT(人的情報活動)においては、「ミイラ取りがミイラになる」という副作用から無縁でいられる者は少ない。情報組織が個人の才能に依存し過ぎれば、必ずこうした問題が発生する。

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ということはつまり、こうしたリスクを承知した上で人材をうまくマネジメントすることが、情報活動には必要ということだろう。

日本の情報活動に何よりも欠けているのは、こうした点なのではないか。

そしてその最たる例が、情報には何の関心もない法務官僚が、自分たちのポストのために維持している公安調査庁なのかもしれない。