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北朝鮮は5月25日午前9時54分に咸鏡北道吉州郡豊渓里近くで、米国の「メモリアルデー」に合わせて二回目の核実験を強行した。核実験後、咸鏡北道の花台郡舞水端里と江原道の元山近くから地対空短距離ミサイルが合計4発発射され、26日にも1発が追加発射された。

朝鮮中央通信は今回の核実験について「共和国(北朝鮮)の自衛的核抑制力を強化する措置の一環として、主体98(2009)年5月25日にもう1回の地下核試験(核実験)を成果的に進めた」と伝えた。そして「爆発力と操縦技術において新たな高い段階で安全に進められ、核武器の威力をいっそう高め、核技術をたゆみなく発展させる科学技術的問題を円滑に解決した」と主張した。

中央通信はまた「今回の核実験の成功は強盛大国の大門を開く新しい革命的大高潮の炎を激しく燃え上げ、150日戦闘に団結し乗り出した軍隊と人民を大きく鼓舞している」とし、「核実験は先軍の威力で国と民族の自主権と社会主義を守護し、朝鮮 半島と周辺地域の平和と安全保障に寄与するだろう」との意義付けを行なった。この核実験は、米国、中国には数十分ほど前に通告されていた。

核実験の規模について、韓国青瓦台(大統領府)の李東官(イ・ドングァン)報道官は同日の定例会見で、「震度4.5前後(日本の気象庁発表ではマグニチュード5.3)の人工地震が感知された」と明らかにした。前回2006年の核実験では震度3.5前後(日本の気象庁発表ではマグニチュード4.9)であったことを考えると、今回は前回の数倍以上数キロトン(核専門家、ハンス・クリステンセン氏は4キロトン程度としている)の爆発力(米国政府高官)があったことを示している。
 
1、第二回核実験のねらい
2006年の核実験時とは異なり、4月の「テポドン2」発射後、予想以上の速さで核実験を行なった。そうした北朝鮮のねらいはどこにあるのだろうか。

このねらいを読み解くにはまず、2006年の外務省声明と今回の外務省スポークスマン声明の違いを比較してみる必要がある。

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第一回と第二回核実験の立場表明の違い

2006年核実験を予告した朝鮮外務省声明には「対話と交渉を通じて非核化を実現しようとする (朝鮮の)原則的立場には変わりがない」とあった。すなわち非核化交渉を進めながらその裏で核保有国を目指し、ブッシュ政権の強硬路線を対話路線に引き戻すというものだった。

しかし今回の立場表明にはそういう表現はない。朝鮮外務省スポークスマンは「敵対勢力によって 6 者会談とともに非核化の念願は永遠に消え去った」としている。この立場の変化を理解してこそ、今回核実験での北朝鮮のねらいを読み取ることが出来る。

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この変化は一言で言って、6ヵ国協議での非核化交渉は放棄し、核保有国としての地位を高めることを最優先させ、核武装の威力で米国を追い込み、力づくで「米朝国交正常化」を実現しようという立場への変化だ。もちろんそれは韓国への圧迫強化の変化でもある。

では今回の核実験のねらいはどこにあるのか。

第二回核実験のねらい

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ねらいの第一は、金正日が「強盛大国」実現を公約した2012年までに、「核の小型化」を実現し、それを大陸間弾道弾に装着して一日も早く米国本土を狙えるようにすることにある。

5月8日に外務省スポークスマンは、「最近われわれが国防力を一層強化するための措置を取っているのは、国の安全と民族の自主権を守るためのものであって、決して誰かの注意をひいて対話でもして見ようというのではない」と言い切ったことがそれを示している。

第二のねらいは、核保有国としての地位確立を急ぎ、後継体制をはじめとした内部固めを促進することにある。
昨年の8月に金正日が脳卒中で倒れた後、北朝鮮権力中枢は、6ヵ国協議に時間を費やす余裕がなくなった。いつまた倒れるか分からない金正日の病状を考えた時、6ヵ国協議よりも後継体制の確立が先決であり、その体制を守る国防力強化が先決であるとの結論を下したようだ。6ヵ国協議では早期の「米朝国交正常化」を実現出来ないと見たからだ。

第三の狙いは核武装のレベルアップを図ることで米国を追い込み、核武装した力を背景にして米朝二国間協議をもぎ取り、「米朝国交正常化」を実現しようとすることにある。

北朝鮮は、核武装を強化していけば、「非核化」交渉をしなくても米国が必ず交渉に出てくると読んでいる。「非核化交渉」を「核軍縮交渉」に転換することで米国からより大きな譲歩を勝ち取ろうとしているのである。
第四のねらいは韓国に対する脅迫を強化することにある。

金正日は、李明博政権が「太陽政策」を放棄したとして、2008年3月以降韓国に対する脅迫をエスカレートさせてきた。金剛山観光に出かけた韓国の女性観光客を射殺し、開城工業団地に駐在する現代の職員を拘束し、契約を無視した法外な要求で「開城工業団地」閉鎖までほのめかしている。

そればかりか韓国が今回「PSI(拡散に対する安全保障国z)」への参加を表明すると、「宣戦布告」だとして「戦争の恐怖」を増幅させ、韓国内の対立を煽り立てている。今回の核実験にこうした「脅迫戦術」を強化するねらいがあったことは明らかだ。

金正日は韓国内の対立を助長することで、2012年の韓国大統領選挙で再び親北朝鮮大統領を登場させ、韓国支配の野望を実現しようとしている。目前に自由民主主義の韓国が存在する限り金王朝の安定はありえないと考えているからだ。

2、核武装は先軍政治の根幹

金正日が核武装に突進するのは、今回の立場表明でも明らかになったように交渉用のためではない。根源的には彼の暴力崇拝′R事力崇拝思想から来るものといえる。この思想による政治を北朝鮮では「先軍政治」と呼んでいる。先軍政治の本質について金正日は次のように述べた。
 
「われわれの銃は階級の武器、革命の武器、正義の武器である。われわれの銃には、抗日革命烈士の高貴な血と魂が込められており社会主義の運命がかかっている。銃がなければ敵との闘いで勝利することも出来ず、国と民族、人間の尊厳と栄誉を守ることが出来ない。・・・私はいつも銃と共に生きている。この世であらゆるものが変化しても銃だけは主人を裏切らない。銃は革命家の永遠の友であり、同志であるといえる。これがまさしく銃に対する私の持論であり銃観だ」(キム・チョル著、「金正日将軍の先軍政治」、平壌出版社、主体89〔2000〕年9月30日)

この発言でも分かるように、金正日が信じているのは銃(軍事力)だけであり、したがって彼は銃に依拠し、銃を通じて自身の信念や体制を守るという徹底した「銃至上主義信仰」を貫いている。このような「銃台思想」が核武装至上主義に行き着き、それが「先軍政治」の根幹となっている。

彼は1996年11月、数叙怩フ北朝鮮住民が食糧難で餓死していた正にその時、人民軍部隊を現地指導しながら、「軍優先主義」について次のように語った。

「トンム(君)たちは私が国の経済事情が難しいのになぜ人民軍隊の強化に莫大な資金を投入し、工場や農村ではなく絶えず人民軍部隊を現地指導するかをしっかりと知らなければならない。国の経済状況が苦しいからといって人民軍の強化を怠れば、わが人民は帝国主義植民地奴隷の運命に転落することになるからです」(前掲書、p304)。

彼は軍優先の方針を統治路線として提示し、「先軍政治は私の基本政治方式であり、わが革命を勝利に導く万能の宝剣(労働新聞、1999.6.16)」と規定しながら「軍隊は社会主義の守護者であるばかりか、幸福の創造者の役割を遂行する」と主張し、経済生産にたいする軍隊の介入と役割まで強調し正当化した。
この軍事優先の思想は統一戦略にも貫かれている。

3、先軍の統一戦略

金正日は、朝鮮半島の統一(韓国の支配)と先軍政治の関係について次のように主張している。

「先軍政治と祖国統一の関係を見たとき、祖国統一はその本質的内容から先軍政治方式の具現を要求するところにある・・・ 今日朝鮮半島における祖国統一の最大の障害要因は、米国の南朝鮮支配だ・・・ 米国の民族抹殺的な自主簒奪を除去し、民族の念願である祖国統一を成し遂げようとするならば、先軍政治方式を具現しなければならない。先軍政治方式を具現してこそ米国の覇権的対北朝鮮侵略政策を阻止し、朝鮮半島の強固な平和を保障することが出来、ひいては朝鮮半島の平和的統一を実現することができる」(シン・ビョンチョル、「祖国統一問題100問100答」、平壌出版社、主体92〔2003〕年2月5日、p175−177)

この金正日の発言からも分かるように、北朝鮮の「平和統一戦略」は米軍を排除することを前提にしている。米軍を排除した上で韓国に親北朝鮮政権を樹立し「連邦制」によって韓国を吸収しようとしているのだ。それが北朝鮮の「平和統一戦略」である。

この戦略を実現させるために北朝鮮は、すでに通常戦争では米韓連合軍と戦えないだけでなく、韓国軍との対決すらおぼつかなくなったことをさとり、迷うことなく大量破壊兵器での武装に踏み切ったのである。

最先端科学武器で武装した米韓連合軍と対峙するためには、最も短時間で、そして最も少ない資金で大量破壊兵器を生産しなければならず、そしてその最も強力な武器である核兵器を保持しなければならないとしたのだ。それ故、金正日は自己の政権の運命を核とミサイルにゆだね、いかなる難関を克服してでも核武器を増やし、大陸間弾道弾にそれを装着しようとしている。そしてそれによって韓国を軍事的に制圧し、「先軍統一」実現に立ちはだかる米国と日本をけん制しようとしている。

このようにして見た時、金正日の先軍政治における核武器の地位と役割は何物にも変えがたいものである。それは「統一戦略」においても「強盛大国」の建設においても根幹を成している。それ故、北朝鮮の核を対話による経済支援での包容や、いくらかの補償と取り替えることは不可能だと断言できる。

金正日は、外交カードのために核兵器を開発しているのではない。また米国が圧迫することがその直接の動機でもない(最近韓国と日本の一部で騒いでいる「米国責任論」は金正日の本質を覆い隠すためのものである)。それは、彼自身の「思想」がもたらすものであり、朝鮮半島をわが物とする「野望」がもたらしたものである。

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核兵器の開発が、金正日自身の内的要求から出ている以上、北朝鮮核問題の解決を、経済的・外交的手段にたよってきたこれまでの方法を一日も早く根本的に見直し、新しい方法を見つけ出さなければならない。その方法とは何か? それは金正日政権の生命維持装置である先軍政治を直撃することである。国連の制裁決議もそこに打撃を与える内容になってこそ意味を持つ。ここでカギを握るのは中国だ。

だがしかし、これまでの中国は表面では北朝鮮との対立を装うが、裏では北朝鮮の核開発を米国や日本に対するカードとして利用してきた。金正日もそれを見抜いているからこそ中国の非難発言を受け流している。

北朝鮮の核問題解決は、ひとえに中国の対応にかかっているといっても過言ではない。中国が北朝鮮との同盟関係をたち切る覚悟をもって、本気で北朝鮮に対峙すれば北朝鮮の核問題は一気に解決する。

中国がこれまでの国連決議を遵守履行するか否か。また新たに採択しようとしている国連決議にどのような態度を示すのか。北朝鮮核問題の解決を切実に望む世界の国々は中国の対応を厳しく監視し、約束したことを行動で示すように仕向けていかなければならない。