国有制は金正日 1人の私有制に変質
北朝鮮の所有制度にも根本的な変化があった。
元々北朝鮮は国有制と共有制を根幹にしていた。共有制というが、大部分の協同農場は国有農場のように運営されるため、実際には国有制単一体制だったといえる。
しかし、70年代から国家の財産が金日成、金正日によって、特に金正日によって私有化される現象が少しずつ強まり、90年代に入ったらすっかり金正日の私有財産に変わるようになる。
後進国で権力者が国家財産を密かに横領することは頻繁にあることだ。しかし、北朝鮮の場合は密かに横領するのではなく、大っぴらに国家財産を私産のように使っている。北朝鮮では金正日が国家財産を自分の財産のように使用するからといって、これを批判したり、はどめをかけたり、起訴する人がいないからだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面現在、北朝鮮は形式的に国有制を維持しているが、ブルネイのようなやや小さい土侯国のような1人私有制に、既に質的に変わったように思われる。北朝鮮の住民は金正日の私有の工場や農場で雇われている労働者にすぎない。いや、実際はいかなる自由もないため、労働者というよりは奴隷と言った方が相応しいだろう。
計画経済の崩壊
国有制が金正日だけによって破壊されたわけではない。北朝鮮では一般的に、お金を儲ける活動ができなくなっており、また、お金があるといううわさが立てば、あらゆる官僚があらゆる名目と言い分でお金を奪っていくため、お金を持った人々は大部分が隠している。北朝鮮で銀行などの金融システムが正常に稼動されていないということも、原因の一つだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面このような地下経済を統計から正確につかめる方法はないが、北朝鮮の地下経済活動の規模や地下資本の規模は、地上経済の3〜4倍になるというのが、多くの専門家の意見だ。
こうした地下資本は当然、全て私有化されている。多くの官僚たちも、こうした地下経済に加わっている。官僚たちがためたお金は、大部分が賄賂でためたお金だが、これを地上経済に活用することはできない。そのまま隠しておこうが(そのまま隠しておくことも地下経済の一部分だ)、でなければ地下資本として運用される。
地上経済は金正日によって私有化され、地下経済は多様な一般人によって私有化されて、現在、北朝鮮で国有制は皮だけが残ってしまった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面国有制だけが破壊されたのではない。計画経済も破壊された。北朝鮮で、かなり大きな割合を占める地下経済が計画経済の範疇に入ってくることができないというのは当たり前のことだ。そして半地下経済といえる市場も、やはり計画経済の範疇に入るのは困難だ。
食糧難によって生じた各種の国家システムの崩壊は、計画経済の意味をほとんど失わせてしまった。70年代から計画経済を絶えず蹂躙してきた軍の経済と、金正日一家の経済も、相変らず計画経済を蹂躙して搖るがしている。
食糧難が本格化した90年代半ば以後、計画経済はほとんど崩壊したと思っても過言ではない。食糧難が緩和された後も同じだ。地下経済の比重が急速に増え、むしろ一層ひどくなった。国有企業の工場稼動率が20%前後にとどまり、地下経済の比重が非常に大きくなった状態で国家計画を立てても、特に意味がない状況だ。
現金正日体制はマフィア集団に最も類似
北朝鮮では、社会主義国家の3大核心要素である、共産党独裁(理論的にはプロレタリア独裁)、国有制、計画経済が全て破壊された。北朝鮮はもはや社会主義社会ではない。
北朝鮮の社会主義的要素は、60年代後半から破壊され始めたが、ますますその破壊の速度が早まり、90年代の半ば以降、完全に破壊された。北朝鮮社会は前近代的封建王朝と、軍事独裁体制と、マフィア集団を適当に混ぜ合わせたような社会だ。
中でも特に、マフィア集団との類似点が最も多い。
北朝鮮体制とマフィアとの類似点を見ると、1)ボスの1人中心体制 2)家族、知り合い、側近中心の運営 3)武力を最も重視 4)恐怖の装置と恐怖心が体制維持の根幹 5)ボスに対する無条件的忠誠を強調 6)暴力的方法以外にボスを変える方法がなし 7)離脱者に対する苛酷な処罰 8)不法なことに、経済的に依存することが多い(麻薬取り引き、偽札取り引き、ミサイル売買) 9)他の人々を脅かしてお金を巻き上げることを仕事とすること(周辺国の脅迫、恐喝) 10)社会発展の闇の存在で、社会から徐々に孤立(金正日政権は地球村の闇の存在) などだ。
現在、北朝鮮体制を支えている最も重要な力は次の数種類である。
1)自然人金正日と、金正日に高度に集中された権威と権力 2) 各種の恐怖機関と恐怖心 3)各種の情報から遮られた閉鎖体制 4)複雑な機関と関係を利用して、金正日に集中している、強大な軍事力などがそれだ。
北朝鮮は社会主義的要素がほとんど崩壊したが、だからといってある新しい理論によって安定した社会を建設したのでもなく、個人独裁を強化してそのままころがって行き、現在の体制に到達したのである。
現在の北朝鮮体制は、崩壊の過程の過渡期が比較的安定しているかのように見えているに過ぎない。(終)