金正日の健康悪化説と後継問題で、今後北朝鮮の権力を握るのが軍部なのか党なのか、様々な意見が出ている。
金日成の死亡後、金正日が主導してきた先軍政治の影響で、北朝鮮国内で軍部の影響力は以前より増したのは事実だ。そのため、金正日の死後、北朝鮮は軍部の集団指導体制で進むという浴_測も出た。
しかし、北朝鮮の高官出身の脱北者たちは、こうした浴_想は北朝鮮の体制の特徴、特に北朝鮮での党と軍の関係を正しく理解していないことから出ていると指摘している。
北朝鮮労働党の国際担当書記を務めていた黄張ヨブ(火ヘンに華)北朝鮮民主化委員会委員長も最近、金正日死亡後の北朝鮮体制は軍ではなく党が掌握する可煤_性が高いと主張した。
◆ 朝鮮人民軍は「党」の軍隊
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面労働党の規約では朝鮮人民軍(以下、人民軍)を朝鮮労働党(以下、労働党)の革命的武装力として定めている。これは人民軍が党の軍隊という意味である。人民軍には軍の指揮統制ラインとは別に、党組織が各レベルの部隊に配属され、指揮をしている。指揮ラインが軍と党で二元化しているのだ。
党の編成で見ると、人民軍は「労働党中央軍事委員会の朝鮮人民軍の党委員会」に統制されている組織だ。人民軍の党委員会の責任書記は、人民武力部の総政治局長が勤めており、総政治局長は軍に対して、党の指示や方針を伝え、軍が党の思いのまま動いているのかを常に監視・統制する。
同時に軍の最高政治機香_である総政治局は、中央党の組織指導部の指示と監督を受けることになっている。したがって、党の組織部長が軍部に強い影響力を行使することができ、軍部の指揮ラインより党の指揮ラインが常に優位を占め、軍を統制している。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面これに関連し、北朝鮮民主化委員会の黄張ヨブ委員長は、1995年に起きた「6軍団のクーデタ謀議事件」を挙げながら、「当時、クーデタ主謀者たちを講堂に集めて殺した。これを直接執行した人物は国防委の金永春副委員長だが、政治的に指導した人物は労働党の張成沢行政部長だった。これは執行している軍人と政治する人の違いを見る好例になる」と説明した。
◆ 軍部への人事権・検閲権は党にあり
党の組織指導部長が軍に強力な影響力を行使できるもう一つの理由は、人事権と検閲権を持っているからだ。
軍人の昇級や補職を含め、軍の人事権も労働党の中央委員会の朝鮮人民軍党委員会の秘書処が握っている。党の書記の香_成員は人民武力部長、総参謀長、総政治局長、作戦局長、幹部局長など、5人で、場合によっては防衛司令官が加わることもある。
また、党組織指導部は軍への検閲権も持っている。軍部が最も怖がっている検閲が、中央党の組織指導部による検閲だ。組織指導部が検閲に出る場合は大体大きな事件が起きた時だ。「組織指導部が乗り出した」という堰_があると、その後、必ず将校が何人かいなくなるためだ。軍部が党の指導と統制下にあるため、過去の金正日も党組織指導部への掌握を通じて軍部を掌握したという話は有名である。
組織指導部内で、軍を担当する具体的な部署は、党の生活指導13課、幹部14課、そして通報課などだ。このうち党の生活指導13課は、労働党内の人民軍当委員会事業や総政治局事業への直接的な指導と統制を行う。
◆ 軍への指導は党の組織指導部13課と幹部14課で
北朝鮮の軍部では金日成と金正日の思想と領導が間違いなく実現されているのか。軍部内の党組織や政治機関が党の領導に従い、動いているのか。これを遂行することが、組織指導部13課と幹部14課の役割だ。人民軍の党委員会や総政治局はすべての事業を単独では取り組めず、必ず事前に13課と協議してから進めなければならない。
13課の責任者は組織指導部の副部長が務める。 組織指導部13課は総政治局との事業分野での連携のために、人民武力部の庁舎に別の事務所を設け、総政治局が準備する党の中央委員会の人民軍党委員会の全員会議などをはじめ、さまざまな会議の進行方法などを話し合い、実行する。
人民軍党委員会や総政治局、軍団レベルの党委員会といった政治機関の事業を指導する。軍部が仕切る思想闘争会議をはじめ主要な会議には必ず13課が出席する。13課は毎年15日間、軍部の将校たちのために中央党の組織指導部の講習を開く。参加対象には独立連隊長や政治委員、旅団長、師団長、旅団と師団の政治委員以上の将校たちが該当する。
組織指導部幹部14課は、軍部の高官人事の最終決定権を持っている。連隊長や連隊政治委員、師団(旅団)の団長や政治委員、軍団長や軍団の政治委員などの将校、海外派遣武官への人事権を組織指導部の幹部4課が握っている。
少将(准将)以上の将校は例外なく、組織指導部の批准対象となる。組織指導部の批准が下ると、人民軍の最高司令官の命令で職務任命と軍事称号が送られる。したがって、組織指導部は北朝鮮軍部の主要な幹部の人事権を掌握することで、軍に対する絶対的な統制力を維持している。