韓国の統一問題は実に複雑だ。
周辺国の一致しない国家 利益、互いに矛盾する思想、価値観などにより、朝鮮半島の統一はいつどのようになされるのかわからない。
しかし、この複雑な国「で最も重要な役割を果たす国は中国だ。中国は1950年代の初めから朝鮮半島の歴史の中で重要な役割を果たしてきたが、最近の中国ほど朝鮮半島の未来を決定する勢力はない。
中国は今、朝鮮半島の統一を願っていない。現在の、韓国と北朝鮮の事情を検討すると、統一が’全朝鮮半島の韓国化’を意味するため、中国はこうしたシナリオを基本的な競争相手である米国の影響力の拡大を招く可能性があると憂慮している。
国内を見れば、中国政権はまだ共産主義の看板を掲げているのに、もう一つの共産国家の崩壊を中国共産党の正当性を損傷する事件とみており、歓迎しないだろう。また、北朝鮮の崩壊は中国の近隣地域で大規模な避難民の問題をはじめとする政治、社会的混乱を引き起こす可能性があり、中国国内の事情に否定的な影響を及ぼすはずだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面中国の北朝鮮合併の可能性はなし
最近、中国が北朝鮮を支持する理由は体制の崩壊を防止するための政策である。事実、中国と韓国の大規模な支援がなかったならば、北朝鮮政権が今まで果して生存できたか疑問だ。
しかし中国の立場から、金正日政権に支援を提供することは、短期的には非常救助の政策だが、長期的に見れば支援の浪費だ。金正日政権は中国からの支援を、経済的効率性を向上させる改革を行わずに、体制維持のために使用するためだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だが、中国が効率性が低い北朝鮮体制を無期限に支持することはできない。また、中国は北朝鮮が経済改革を始めないと体制の崩壊は時間の問題であると理解している。そのため、中国は平壌に経済をよりよく管理することができる政権が生まれることを歓迎するだろう。
中国は朝鮮半島の北部に安定した’緩衝国が’を必要とするが、こうした国家を治める勢力が’金王朝’ではないと考えている。米国に’政権 交替(regime change)’を主張する政治家たちがいるということは広く知られた事実だが、中国政府も北朝鮮の政権交替を願う理由がある。金父子と関係がない、新しい平壌政権は、過去の誤ちに対する責任を金王朝に帰し、中国が願う改革を始める機会があるためだ。
最近、韓国では中国が北朝鮮の国土を吸収するはずだとの懸念が高まっている。筆者はこのような憂慮は根拠が特にないと考える。1910年の日韓合邦のような事件は21世紀ではほとんど不可能だ。その理由は少なくとも2つある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ひとつは、弱小国に対する侵略を合法的な行為と認める植民地時代は終わったということだ。今でも大国が弱小国に圧力を加えて搾取しはするが、形式的な国家の合併は想像し難い。1945年以後、国際的に認められた国家が合併にあったことはない。一部で合併の事例として主張される1951年のチベットに対する中国侵攻は、完全に性格が違う。2007年の北朝鮮と違い、1951年のチベットは国際的に認定された国家ではなかった。当時、チベット政府と修交した外国の政府は一つもなかった。
中国による北朝鮮合併の可能性がほとんどないというもう1つの理由は、中国のこうした行為が北京の外交官たちが主張する’平和的浮上論’(peaceful rise)に矛盾して、隣国らが中国に恐怖感を持つ結果を招き、中国の国際的な地位に大きな損傷を与える可能性があるというものだ。ベトナム、ラオス、インドやロシアまで、北朝鮮の合併を衝撃的な事件として受け入れるようになるはずで、中国の浮上を自身に対する挑戦と見なすはずだ。また合併により、中国の地政学的な状況が朝鮮半島で多少改善されたとしても、全体的に見ればより大きな損害をこうむるようになる。
そのため、中国は北朝鮮を内モンゴルやチベットのような’北朝鮮自治州’とはしないだろう。また、これは中国が北朝鮮に対して統制できないということを意味しない。中国は直接的な統制よりも、間接的な統制が、より合理主義的な戦術であると考えている。言い換えれば、併合よりも衛星政権が成立する可能性がより高いように思われる。1940年代末から1980年代末までソ連が東ヨーロッパ国家を厳しく統制したが、これらの国家は公式的に主権的独立国家として残った。実際の政策ではモスクワの許諾無しに重要な政治決定を下すことができなかったチェコやブルガリアも、国連のメンバー国である主権国家として認められた。
中国の干渉が見えない ‘クーデター’
こうした点から、中国が北朝鮮の体制崩壊を防ぐ必要があると判断するならば、北朝鮮で衛星国家建設を試みることはできる。最も合理的な方法は、平壌の親中派によるクーデターを援助することだ。今、中国の北朝鮮に対する経済進出が進み、北朝鮮の執権エリート層にも中国と近い人物がでてきているが、こうした人物がクーデターを準備することができる。
特殊なケースだが、中国が武力でこうしたクーデター勢力を支持する可能性も排除することができない。1979年12月にソ連の特務機関が準備したアフガニスタンのクーデターの前例がある。当時、アフガニスタンで親ヴhがクーデターをおこして政権を掌握した時、ソ連の特務部隊はアフガンの首都であるカブールに上陸して、大統領宮をはじめとする戦略的な地点を占領して、危険だとみなされた政府の要員を暗殺した。もちろん、このような武装クーデターを中国が支持する可能性は高くない。北京にとって最善の方法は、中国の干渉が見えないクーデターだ。
このようなクーデターは容易でない。外交の歴史を見れば、中国は1949年の共産主義革命以後、隣国に衛星国家を作ったことが 一度もなかった。それだけでなく、北朝鮮で親中派が政権を掌握すれば、しばらくは中国に負担として残るだろう。旧ソ連の場合、東ヨーロッパの親ラq星国家は、地政学的に重要な緩衝地域だったが、経済的に これらの国家に対する直間接的な支援はソ連の予算のかなりの割合を占めた。また、このようなクーデターは中国の国際地位に損失を与える可能性がある。そのため、北朝鮮への進出は中国にとって利益よりも害になる可能性がある。
中国の北朝鮮進出, 韓国が対応する方法なし
こうした潜在的な問題点にもかかわらず、中国が北朝鮮への進出を決定するならば、韓国が取ることができる措置は何であるか。
正直に言って、このような挑戦に直面する大韓民国には、できることが特にないようだ。中国が軍事進出ではなく、親中派を通じて間接的に政権を掌握する場合、韓国政府は反対する口実までない可能性もある。中国の人民解放軍が北側の土地に入っていく場合も、国力が弱い韓国は中国の行為に挑戦するのは難しい。
また、米国も北朝鮮問題ゆえに中国と武装衝突をしようとしないだろう。最近、米国が北朝鮮を危険な国際問題として見る基本的な理由は、北の核、そして核兵器に対する統制 のためだ。しかし、北朝鮮が中国の衛星国家になるならば、北朝鮮にある核兵器の安全を保障するために、こうした中国の作戦は米国も静かに歓迎するかもしれない。
もちろん米国のメディアが中国の北朝鮮進出と間接的な侵略を批判するが、このような批判は実際、対北朝鮮政策にはそれほど影響を及ぼすことができないだろう。
このようになれば、国際社会も特別な助けにはならないだろう。強大国が 近隣地域に自身の利益に合う衛星政権を建てることはあり得ることだ。相対的に小さな国である韓国であるがゆえに、猛スピードで成長する巨人である中国との関係を脅かす政府を探すことは困難であるだろう。
中国は北朝鮮の市場化を激励して、経済改革を導入せざるをえない。このような目的を達成するために、中国は親中派の幹部を通じて必要な改革を行ったり、多くの投資や支援を提供するはずだ。このような政策は北朝鮮に進出する中国企業の利益を保障するだけでなく、北朝鮮の経済事情を改善し、生活水準の向上をもたらすはずだ。
こうした親中政府は初期の段階で北朝鮮国内でも人気を得ることができる。北朝鮮の幹部らは民族主義の美徳を説破しているが、衛星政権を歓迎する可能性が高い。 幹部にとっては中国の改革政策が韓国による吸収統一よりも望ましい選択であるためだ。
中国は直接北朝鮮を治めずに、現地の人材、すなわち北朝鮮の幹部をそのまま利用せざるをえない。中国の統制下でも北朝鮮の幹部階層は自身の特権をそのまま維持するはずだ。また、経済成長によって国民所得と生活水準が向上すれば、幹部の権力と実際の所得はより大きくなるはずだ。
このようなシナリオから、市場化によって北朝鮮体制が完全に資本主義に変わる時、現代式大企業を所有し、経営する北朝鮮の財閥は、圧倒的に北朝鮮幹部や彼らの息子たちがなる可能性が高い。また、中国は人権侵害を問題としないため、金父子の時期に犯罪をおこした幹部まで報復に神経を使わずに、良い生活をすることができる。
韓国統一の最も重要な変数は中国
しかし、北朝鮮体制の崩壊と韓国による吸収統一の場合はそうではない。朝鮮半島にドイツ式の吸収統一が生じるならば、一瞬にして資本主義社会に進入することになる北朝鮮の幹部らが特権を維持するのは難しいだろう。彼らが管理した北朝鮮の企業は、北側に進出する韓国の大企業と競争にならない。北朝鮮の幹部も韓国の企業家に比べれば必要な知識と技術がかなり不足し、韓国の経営者の補助職員に転落するはずだ。
また金父子政権の時期に行った犯罪が露出したら、住民たちが報復を要求できる。人権侵害に対して責任がある者は一部であるとしても、彼らは罰を受け、これ以上昔の特権を維持できないだろう。そのため、北朝鮮の幹部らは自称’民族主義者’にもかかわらず、自身の既得権ゆえに親中政府に反対せず、中国の支配を’次善策’とみる理由がここにある。
北朝鮮の住民たちも、中国による市場政策の結果を歓迎すると考えられる。大飢饉を経験した彼らに毎日米を食べる機会が与えられるならば、幸福だ。中国やベトナムのようなこうした改革は、短期間で経済を迅速に活性化させることができる。
しかし、親中政権になっても、北朝鮮の住民たちが享受する生活水準と政治的自由は、韓国の住民に比べればかなり遅れるだろう。そのため、住民たちの間で韓国に対する魅力が高まり続ける可能性がある。過去に、東ドイツの住民たちは1970-80年代に ソ連の厳格な統制ゆえに、自身の意見を表明できなかったが、良い生活をしている西ドイツの成功をよく知っており、非常にうらやんだ。北朝鮮の住民たちも東ドイツの人々と同様だろう。このような現状は私たちに希望を与える。
世界の歴史がよく示しているように、傀儡政権として誕生した政府も、適切な機会に後援国の影響圏から抜け出すことができる。北朝鮮では、金日成の政権が1945-48年にソ連の衛星政権として始まったが、1950年代末に、金日成は民族主義勢力を動員して、ソ連の統制から完全に抜け出した。東ヨーロッパの歴史を見ても似ている。
1980年代にソ連の統制力が弱まり、東ヨーロッパ国家の共産政権は、みな転覆した。
それでも中国の進出は決して望ましいことではない。北朝鮮への投資の拡大等が見られる中国は、韓国の統一ゲームで最も重要な存在として登場した。善し悪しは別として、中国には韓国の統一を妨害し、無期限に延期する潜在力がある。
問題は中国政府がこのような潜在力を使用するかという点だ。遺憾ながら、中国が潜在力を使用しても、我々にできることはないということだ。