我々が北朝鮮に支援してきた米の一部が、軍糧米に転用されているという長年の疑惑の明白な証拠が確保された。軍当局は少なくとも2003年以後、北朝鮮軍の前方部隊地域で、大韓赤十字社のマークなどが書かれた麻袋を荷役したり積んでいる様子を持続的に観測してきたという。対北支援米が北朝鮮軍に流れて行ったという十分な証拠に違いない。
金正日政権が対北支援食糧を私物のように自分勝手に分配してきたという事実は、脱北者と国際救援団体の関係者の証言、市場の秘密撮影などを通じて広く知られていた。
ただ、韓国政府がその証拠を直接確保して公開したのは今回が初めてだ。この証言によれば、金正日政権は対北支援食糧を軍隊に横流しするだけでなく、住民に売って統治資金を作っている。甚だしくは、国際機関の監視をすり抜けるために、住民に与えてからまた奪うというショーをすることもある。
毎年40~50万トンにのぼる私たちの対北食糧支援は、今飢えている住民たちの生存のためという人道的な目的を持っている。北朝鮮体制は、言葉では平等を掲げているが、少数の権力層とこれと結託した者たちは決して飢えない極度の不平等社会だ。
したがって対北支援食糧が貧困層に届くのかどうかが人道的目的の実現のカギだ。特に、言論と表現の自由が全くない北朝鮮体制だから、私たちは外部の支援食糧の分配の透明性と外部のモニタリングをいつも強調してきた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面‘無条件’対北支援に問題はないと主張してきた現政府は、対北支援の食糧が軍糧米に転用されても北朝鮮で食糧の総量が増えれば一般の住民もその恩恵を得られると主張してきた。更に、北朝鮮の軍人も人道的見地で飢えないようにしなければならないという実用的(?)人道主義論を展開したが一理がないわけではない。
だが、金正日政権の対北支援食糧の分配権の独占は、その権力を維持して強化する有力な手段になるという点を見逃してはいけない。逆説的に、北朝鮮の食糧難が外部支援を促進させて、政治的不安の代わりに権力を強化するという効果を生んでいるのだ。結局、分配の透明性を問題視しない‘無条件’対北支援は、金正日の金庫を満たし、独裁体制の延長を助けていることになる。
一方で、対北食糧支援が北朝鮮の食糧の総量を増やすという発想も、中国の変数を見逃している。90年代半ばの悲劇的な食糧難の衝撃が吹き荒れた後、北朝鮮の住民は中国で食糧を買って市場で売る生存方法を模索した。一般の住民にとって対北食糧支援は、北朝鮮国内の穀物の価格を少し下げる効果があるだけで、お金を出して買って食べなければならないという事実は決して変わらない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面分配が歪曲された対北食糧支援は、金正日政権にはおびただしい利権であると同時に恩恵であるが、一般の住民にとっては高根の花であるだけでなく、自らを抑圧する体制が続くための促進剤という、明らかな利害関係の対立が存在する。
新政府は対北食糧支援の分配の透明性に対する対北圧力を強化する政策の転換が必要だ。他に類例を見ない鉄拳統治が行われている北朝鮮で、食糧の分配の透明性を完全に確保することは難しい。ただ、持続的な問題提起と条件化を通じて、金正日政権が相当な負担を持つようにすることが重要だ。
すでに太陽政策の10年を経て、韓国に対する経済的依存度が非常に高まってしまった北朝鮮政権は、こうした圧迫に対して馬耳東風で図々しくふるまうことができなくなった。私たちがしつこく一貫して分配の透明性を要求すれば、ある程度貧困層にも対北支援の恩恵を届けられるという自信が何よりも重要だ。