北朝鮮の国家安全保衛部が国境警備隊まで動員し住民の不法通話を撲滅すると布告し、住民統制に躍起になっているという。今年初め、刑法第60条に該当する「国家転覆陰謀罪」に外部との不法通話摘発時は厳罰に処するとの内容が追加され、住民は緊張していると内部消息筋が伝えてきた。
両江道の消息筋は27日、デイリーNKとの通話で「人民班会議で農村動員への参加を奨励している最中に突然『田畑の草取りで全国民が多忙な日常を送っている時期に、隠れてひそひそと他の国(韓国)と不法通話を行う者は必ず撲滅する』と話していた」と話した。
人民班長は会議で「不法通話者を摘発するために国境警備兵も投入されている。むやみに総動員期間に不法通話で汚点を残すことのないよう、農村動員に積極的に参加するように」と強調していたという。
人民班長はまた住民に「叩けば泣くふりもしろ」と注文し、「我が(人民)班では今回の取り締まり期間に不法通話で逮捕される世帯があってはならない」と強調していたという。所属する世帯が取り締まりに摘発される場合、該当人民班長にも被害が発生することを懸念してのことだ。
消息筋によると、最近両江道保衛部は国境警備隊と協力し、住民の住宅を昼夜問わず随時点検しており、韓国や中国など外部との通話者検挙に乗り出しているという。保安当局は主に夜間に一般家庭を巡回しながら監視を行うが、ドアを開けようとしない住民と軍人間の衝突も頻発しているという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面こうした北朝鮮当局の措置に対する住民の反応は二分される。会議に参加した住民は「最近警備兵らが酒を買うと言って時折一般家庭を訪問するのを何度か見た。だからといって不法通話者をすぐに検挙できるわけではない」との反応がある反面、「保衛部が不法通話者を逮捕するとヒルのように躍起になっている時こそ注意しなければ」と話す者もいるという。
また、「あちら(韓国)の家族がたまに送金してきたり、家族のことが気になり電話するというのは法を扱う人間なら承知の事。一部の保衛部や警備隊員らは、脱北者の家庭を訪問し遠まわしに金を要求するといったことも発生している」と消息筋は説明した。
消息筋の説明では、韓国と通話する住民もいるが、密輸業者が商品流通のために外部と通話することがほとんどだという。北朝鮮当局が外部と通話する住民を全員逮捕するとしたため、密輸も減り市場も活気が下降気味だと消息筋は指摘する。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面消息筋はさらに「密輸を行う住民は中国の貿易業者と短時間で通話しながら摘発を逃れている。取り締まりに摘発されると罰金を払うか、刑を受けるかの選択しかなく、結局のところ被害は住民にふりかかるため、密輸業者は慎重になっている」と話した。
北朝鮮は今年初め、刑法第60条に該当する「国家転覆陰謀罪」に ▲韓国など外国との不法電話通話 ▲DVDなど韓国ドラマ視聴及びラジオ聴取 ▲麻薬服用と密売 ▲密輸による人身売買と性売買 ▲脱北支援と国家機密漏洩など5つの事項を追加した。
北朝鮮当局が内部情報流出や外部情報流入が体制維持に対し深刻な脅威要素になると判断しているだけに、当面は外部との不法通話に対する取り締まりが続くものと思われる。