北朝鮮が今月下旬に第9回朝鮮労働党大会を控える中、韓国大統領府は金正恩政権の対米戦略が転換される可能性に注目し、2018年の南北軍事合意である「9・19軍事合意」の復元手続きを検討しているという。

しかしこうした期待は、残念ながら現実を直視したものとは言い難い。北朝鮮はすでに韓国を「敵対的な二つの国家」と位置づけ、民族統一という従来のスローガンを事実上放棄した。これは一時的な戦術転換ではなく、体制の生存戦略そのものに関わる長期路線である。

金正恩政権にとって、最大の優先課題は体制の安定と権力の世襲維持だ。経済制裁の長期化と慢性的な食糧不足に直面する中、外部の「敵」を明確化することで内部統制を強め、住民の不満を外に向ける必要がある。その文脈で「敵対的二国家論」は極めて有効であり、容易に撤回できる性格のものではない。

また、対米・対南対話の再開は、北朝鮮にとって制裁緩和や経済支援を引き出すための交渉カードにすぎない。相手側が先に融和的な姿勢を示せば示すほど、北朝鮮は譲歩の必要性を感じなくなる。むしろ、軍事挑発と対話の「硬軟二刀流」を使い分け、最大限の見返りを引き出そうとするのがこれまでの常套手段だった。

党大会は、体制の結束と指導者の権威を内外に誇示する場であり、対外融和を打ち出す舞台ではない。核・ミサイル開発の正当化や対敵闘争路線の強化が再確認される可能性が高い。韓国側が期待するような政策転換が示される公算は小さい。

過度な楽観は、現実的な対北政策の構築を妨げる。必要なのは、対話への期待ではなく、長期的な対峙を前提とした抑止と管理の戦略である。北朝鮮の路線転換を安易に予測する姿勢こそが、朝鮮半島情勢を不安定化させる最大の要因であることを、いま一度認識すべきだ。