北朝鮮で、5年に1回の朝鮮労働党大会が2月下旬に開催されることが決まった。労働党大会は、体制の基本方針と権力構造を確認する最高意思決定の場である。北朝鮮は、憲法上も朝鮮労働党が国家を指導する体制をとっており、金正恩総書記にとって今回の大会は、自身の唯一独裁体制を再確認し、再定義する重要な節目となる。
今回の党大会をめぐっては、単なる政策議論にとどまらない兆候が目立つ。2023年以降、公式報道では金日成主席や金正日国防委員長といった先代の業績への言及が減少し、代わって金正恩氏自身の決断や責任を強調する表現が増えている。先代を後景に追いやり、踏み台にしようとする意図が透けて見える。
象徴的なのが、党大会を前にした農業政策をめぐる発言だ。金正恩氏は、金日成時代の農業路線について「現実に合わなかった」と公然と否定した。これは単なる政策修正ではなく、「金日成神話」そのものに手を付ける異例の行為である。北朝鮮では、先代指導者の路線を否定すること自体が長らくタブーとされてきた。
金正恩氏の狙いは明確だ。「金日成・金正日国家」という枠組みを弱め、自らを唯一の正統な権力の源泉とする独裁体制を完成させようとしている。金正恩氏は、「白頭の血統」の本流から見れば側室・高容姫(コ・ヨンヒ)女史の子という「傍流」に位置づけられる存在だ。自身、あるいはその血統が体制の頂点に居続けるためには、傍流を本流へと上書きする必要がある。今回の党大会は、その転換点となる可能性がある。
党大会を前に、長女の金ジュエ(主愛)が公式行事に繰り返し登場していることも偶然ではない。最高の政治舞台を通じ、「傍流の血統」継承を自然な流れとして内外に刷り込む狙いがうかがえる。
今回の党大会は、金正恩氏が過去を切り捨て、現在を掌握し、次の時代まで支配しようとする――その危うい野心が可視化される場となりそうだ。
