北朝鮮北西部・新義州で建設が進む「新義州温室総合農場」について、単なる農業施設や洪水復興事業を超え、国境経済を意識した複合拠点として整備されている実態が浮かび上がった。韓国統一研究院が12日に公開したチョン・ウニ研究委員の報告書が明らかにした。

同農場は、2024年夏の鴨緑江大洪水で大きな被害を受けた新義州・南新義州一帯の復旧事業として始まった。しかし報告書は、朝鮮労働党機関紙・労働新聞の報道を分析しつつ、同施設が従来の温室農場とは異なる政治的・経済的意味を持つと指摘する。既存の温室が「住民の食生活改善」や「野菜供給」を強調してきたのに対し、新義州温室では「国境の関門」「地方発展・中興・繁栄」「潜在力」といった表現が繰り返し用いられているという。

敷地面積は約450ヘクタールとされ、北朝鮮最大規模だ。温室施設に加え、農産物の加工工場、保管倉庫、研究施設、鉄道や貨物駅、道路網、さらには宿泊施設や公園整備までが含まれ、生産・加工・流通・観光を一体化した構想が読み取れる。報告書によれば、金正恩国務委員長は2025年夏、現地指導の際に鉄道駅の設計を旅客中心から貨物中心へ変更するよう指示したとされ、物流拠点としての性格が強まった。

中国・丹東での現地調査では、中国側の資機材や重機が建設に投入されたとの証言も確認された。生産物が中国に直接輸出されるかどうかについては見解が分かれるものの、外部資本や技術を活用した経済性重視の運営が念頭に置かれている可能性があると分析している。

報告書はまた、洪水常襲地でありながら肥沃な沖積土という地理条件に着目し、もともと民間主導で広がっていた温室農業の実績を国家が吸収し、超大型モデルとして制度化した点を強調する。新義州温室総合農場は、金正恩体制下で進む地方発展政策が、内向きの民生重視から国境を意識した外向き経済へと転換しつつあることを示しているのかもしれない。