北朝鮮当局が年末年始を迎えるにあたり、全国規模で高強度の「特別警備週間」を宣言した。韓国の独立系メディア「サンドタイムズ(ST)」によると、今回の警備は例年の3~4日間を大きく上回る17日間に及び、事実上の“準封鎖状態”が敷かれているという。金正恩国務委員長の最高司令官推戴記念日(30日)や新年、さらに来年初めに開催されるとみられる朝鮮労働党第9回大会を控え、体制引き締めを狙った措置とみられる。
STによれば、特別警備は12月25日午後5時から来年1月10日午前0時まで実施され、平壌へ通じる主要ルートを含む各地で通行が厳しく制限されている。移動証明書の発給も事実上停止され、生計のための移動すら困難となり、住民からは「生活が完全に止まった」との悲鳴が上がっているという。
当局は党・安全機関(警察)・保衛機関・検察・人民委員会を総動員し、「事件・事故ゼロ」を掲げて住民監視を強化。人民班単位で24時間体制の監視が敷かれ、銅像や研究施設などの警備も大幅に増強された。STは「コロナ禍の封鎖期を思わせる緊張感が漂っている」と伝えている。
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取り締まりは私生活にも及び、「複数人で集まって話す行為」や「酒宴」、「不謹慎な態度」までが取り締まり対象とされている。住民同士の交流や不満表出を未然に封じる狙いがあるとみられる。
さらに当局は、警備強化に伴う負担を住民に転嫁しているという。STによれば、警備要員用の暖房燃料を住民側が供出するよう指示が出されており、食糧難に苦しむ世帯から強い反発が出ている。咸鏡北道の住民は「食べる物もないのに、暖を取る薪まで差し出せと言われる。こんな祝日はない方がましだ」と憤りを語ったという。
当局はこうした不満を抑え込むため、「外部勢力の脅威」を強調。国境地域では「潜伏するスパイや破壊分子が機会を狙っている」と警告し、脱北を一件も許さないよう厳命している。保衛機関による監視は一層強まり、地域全体が“凍りついたような恐怖”に包まれているとSTは伝えている。
