6日午後、中国海軍の空母「遼寧」から発艦した中国軍のJ-15戦闘機が、沖縄本島南東の公海上で航空自衛隊のF-15戦闘機に対して断続的にレーダーを照射した。特に2回目は照射時間が約30分間と異例の長さだったという。

これを受けて日中間の緊張が高まっているが、さらに懸念されるのは今後の「偶発的衝突」の可能性だ。それが起きたとき、実戦ではどんな様相が生まれるのか。

かつて、中国人民解放軍(PLA)空軍は、2015年に行われた「ファルコン・ストライク」演習で、タイ空軍のスウェーデン製グリペンC戦闘機にソ連製 Su-27SK で対抗したが、視界外(BVR=Beyond Visual Range)戦闘で完敗した。Su-27SK は 19 機が撃墜判定を受け、対してタイ空軍はわずか3機のグリペンを失ったのみだった。近接戦性能の優勢を活かせず、古いレーダー、旧式ミサイル、電子戦システムの限界があらわになった。

当時、軍事アナリストはこう評していた。
「現代空戦では、単なる機体性能だけでは足りず、電子戦・情報共有・ミサイル誘導の統合力が鍵となる」

あれから10年――。

今年5月7日、パキスタン空軍の中国製戦闘機 J-10C と空対空ミサイル PL-15 が、インド空軍の主力機ラファールをBVRで撃墜した。かつて西側機に模擬戦で惨敗を喫した中国製機の「覚醒」は、軍事情勢に新たな警鐘を鳴らしている。

J-10C に代表される中国製戦闘機は、AESA レーダー、データリンク、現代電子戦装備を獲得。さらに PL-15 のような長射程・アクティブ誘導ミサイルを搭載する“ネットワーク戦闘機”へと進化を遂げた。

(参考記事:韓国、「兵器生態系」構築し輸出競争力の強化ねらう

この撃墜劇は、それらの近代化が単なる“見かけ倒し”ではなく、実戦で通用するレベルに達したことを示すものだ。ラファール側が迎撃態勢を整える前に、J-10C が長距離から射撃を行い、標的を撃破。PL-15 の長射程と高性能誘導がその決め手となったという。

この実戦での勝利は、PLA による近年の戦力強化と整備の急速さ、さらに「機体単独」から「統合システム」への転換が成功した証左と見られる。

軍事専門家はこう指摘する。
「中国機を“旧式・量産型”と軽視する認識は、もはや過去のものだ。今や勝敗は、単なる速度や機動力ではなく、電子戦能力とネットワーク統合力で決まる」

東アジアをはじめ、複数国の防衛当局者にとって、今回の出来事は他人事ではない。かつて失敗した中国の空軍力はこの10年で変貌し、「ミサイル射程・情報統合・電子戦」での優位を持つ存在に生まれ変わった。

かつての惨敗が、今日の勝利を育てた──。
空軍力の評価軸が、“機体性能”から“システムの統合力”へと移り変わった今、日本を含む西側各国は中国軍の実力に対する慎重な見極めを迫られている。