年末を迎えた北朝鮮各地で、住民同士がささやかな忘年会を開く動きが見られるが、こうした私的な親睦会さえも思想上の弛緩を招く恐れがあるとして統制の対象となり、不満の声が高まっている。

両江道のデイリーNK内部情報筋によると、先月末、金正淑郡の市街地で朝鮮社会主義女性同盟(以下、女性同盟)に所属する主婦ら約10人が、1人当たり米1キロを持ち寄って小規模な忘年会を開いたところ、郡女性同盟に報告され、最終的に「思想闘争会」の場で批判を受ける事態となった。

この問題は、女性同盟の生活総和(自己批判と互いの評価を行う会合)の時間に、別の参加者が「9回党大会を控え、国全体が沸き立っている時期に何の忘年会か」と指摘したことで表面化した。指導のため同席していた女性同盟の活動家が事態を把握し、郡組織に報告したという。

情報筋は「忘年会といっても、主婦たちが餅や農麺(じゃがいもでんぷん麺)、ねじり揚げ菓子(クァベギ)などを作って食べ、歌を歌う程度のものだ」と説明。「うまくいった1年を分かち合う人もいれば、苦しい1年を早く終えたいと互いを慰める場でもある」と語った。

しかし今年は9回党大会を目前に控え、こうした日常的な習慣さえも「思想のゆるみ」として非難の対象になる雰囲気が広がっているという。実際、思想闘争会では「現実の沸き立つ雰囲気から逸脱した行為だ」「時代精神にそぐわない」との批判が相次いだとされる。

(参考記事:「飲み会で政策批判」金正恩、エリート経済官僚5人を処刑

一方、当事者の女性らは「こんなささやかな集まりもダメなら、いつ息ができるのか」と不満を露わにしている。「女性同盟はいつも労力動員と負担ばかり押しつけ、何一つしてくれないのに、自分の金で作った餅を分け合ったことが罪になるのか」「犯罪でもないのに大げさすぎる」と反発の声も上がる。

また、一部では「政治的に敏感な時期だから、些細なことでも大きな問題として扱う傾向が強まっている」との指摘もある。各組織が「思想的緊張を維持せよ」と要求される中、どんな小事でも「思想弛緩」に結びつけられているという不満が広がっている。

さらに「女性同盟の活動家が実績作りのために問題を大きくしている」という批判的な見方も出ている。生活総和を指導しに来ていた活動家が「重大問題」として郡にまで上げたことで事態が過度に拡大したというのが住民側の主張だ。

こうした動きを受け、女性らの間では「怖くて生活総和でも本音を言えない」と萎縮する様子も見られ、組織生活全般への冷笑が広がる兆しも出ていると情報筋は伝えた。