北朝鮮の金正恩総書記の娘・ジュエ(キム・ジュエ)氏が、9月の中国・北京での閲兵式以来、約3カ月ぶりに公の場へ姿を現した。とりわけ注目されたのは、父と別に軍の将校から敬礼を受け、単独でカメラに収められた場面だ。北朝鮮が後継者としての地位をより明確に位置づける演出を進めているとの分析が広がっている。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞は11月30日、「朝鮮人民軍空軍創設80周年記念行事が28日、江原道・葛麻(カルマ)飛行場で盛大に開催された」と報じた。公開された写真には、金総書記と肩を並べるようにジュエ氏が写り、父と同様の黒いレザージャケットにサングラスという装いで、軍の兵器を視察する姿も確認された。
特筆すべきは、朝鮮中央テレビが放映した、金総書記とは別のタイミングで将校らからの敬礼を受けていた場面だ。ジュエ氏が単独ショットで登場するケースは異例で、北朝鮮が国内外に「次代の象徴」をアピールしたものとの見方が出ている。
ジュエ氏は2022年11月に初登場して以降、ミサイル発射視察や建国75周年軍事パレードなど重要行事に度々同行してきた。だが今年9月の北京での閲兵式参加以降は露出が途切れ、一部では「後継演出を意図的に調整している」との指摘もあった。北朝鮮は歴代指導者の正統性を演出する際、過度な露出と沈黙を巧みに織り交ぜてきた経緯がある。
一方で、今回の写真をめぐってはジュエ氏の顔立ちが過去と微妙に異なって見えるとして、一部で「整形説」まで囁かれる状況だ。北朝鮮が若年の後継者像を戦略的に磨き上げている可能性も否定できない。
(参考記事:【比較写真】金正恩の娘「ジュエ氏」85日ぶりに激変登場…突然の“雲隠れ”の間に何があったのか?)
韓国の専門家からは「将校からの単独敬礼は象徴性が強い。ジュエ氏の“国家後継者”マーケティングが次の段階に入った」との声も上がる。また、ジュエ氏をめぐる露出の緩急は、軍と住民に対し「決まった未来」を刷り込む政治的儀礼であり、金正恩政権が安定的な権力継承構図の提示を急いでいる兆しとみる声もある。
ジュエ氏は現在10代前半とみられ、父の陪席を伴う“後継レッスン”はまだ始まったばかりだ。しかし、軍創設節目で見せた単独での威厳の演出は、北朝鮮が“キム・ジュエ体制”の地ならしを着実に進めている可能性を感じさせた。
