北朝鮮で「民族最大の名節」、つまりお祝いの日と言えば4月15日だ。1912年のこの日、平壌郊外の万景台(マンギョンデ)の丘にある民家で、後に北朝鮮の主席となる金日成氏が生まれた。
1962年に生誕50周年を迎えて臨時休日となり、1968年からは公式の祝日となった。「4.15節」と呼ばれていたが、1997年にチュチェ(主体)年号制定と共に、この日を「太陽節」と呼ぶようになった。
しかし、昨年からは太陽節の名前が国営メディアにあまり現れなくなった。金正恩総書記の神格化を進めるにあたって、何らかの問題があったのだろうか。名称は4.15節に戻され、各地にある「金日成主席は永遠にわれわれとともにいらっしゃる」と刻まれた永生塔の撤去も進み、当日の行事も縮小傾向にある。
(参考記事:北朝鮮「チュチェ年号」の使用を中止…金正恩氏の神格化進行か)太陽節を祝う舞踏会も一昨年を最後に行われなくなったが、2022年の舞踏会では、深刻な問題が起きていた。
清津(チョンジン)市で企画された太陽節110周年記念の慶祝舞踏会に向けて、清津鉱山金属大学と呉仲洽(オ・ジュンフプ)清津第1師範大学の学生たちが練習に動員されていた。その最中、鉱山金属大学の男子学生が師範大学の女子学生につきまとい、セクシャルハラスメントを行った。
この様子を見ていた師範大学の同じ班の学生が、「なぜ他の大学の学生を捕まえてそんなことをするのか」と抗議し、女子学生をその場から連れ戻そうとした。しかし、鉱山金属大学の男子学生は「かわいいから話しかけただけなのに、何が悪いのか」と反論。これをきっかけに両校の男子学生の間で口論が発生した。
やがて口論はもみ合いに発展し、巻き込まれた女子学生の服が破れたことで事態は一気に激化、大乱闘へと発展した。清津市安全部(警察署)は、この騒動に関与した28人以上の学生を逮捕し、主犯格の特定に向けた取り調べを行っている。
(参考記事:【動画】北朝鮮労働者とタジキスタン労働者、ロシアで大乱闘)
情報筋によれば、鉱山金属大学の学生の多くは軍隊上がりで、粗暴な言動が目立つ者も少なくない。そうした背景を持つ学生が他校の女子学生に手を出し、事態がエスカレートしたとみられる。
また、縄張り意識や大学間のプライドも大きく関係しているようで、自校の女子学生が他大学の男子学生から不当な扱いを受けたとなると、黙ってはいられないという心理が働いた模様だ。
太陽節のみならず、国家的な祝日や政治的に重要な日の前後には、一切の事件・事故の発生を許さないというのが北朝鮮のお国柄。デイリーNKの内部情報筋は、学生たちには退学などの重い処分が下されると見ていたが、その後の処遇は不明だ。
