北朝鮮の人々は、あまりの寒さに震えている。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、現地の石炭価格は昨年10月末に1トン15ドル(約2250円)だったのが、12月末には23ドル(約3450円)に上昇した。
石炭価格は、需要の増える冬には上昇傾向となるが、今年はその上がり方が非常に速い。ロシアを迂回して中国に輸出する量が増え、国内市場に出回る石炭が減ったからだ。
そんな中で、人々は山に入って薪を拾い、暖房用の燃料として使っている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)や羅先(ラソン)など日本海に面した地域は、海流の関係で緯度の割に冬は温暖だが、現地の情報筋によると、1月から2月初旬にかけて、最低気温が氷点下15度を下回る日が多かった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面清津(チョンジン)市民は、仕事そっちのけで山に入り、薪拾いをしている。本来、無断欠勤は違法だが、地方の国営企業は冬にこれといった仕事がないため、堆肥(肥料の代用とする人糞)のノルマさえ達成しておけば、出勤しなくとも長期欠勤でない限り、少し批判される程度で済まされるのが一般的だ。
市内に近い山には木がないため、斧やノコギリ、弁当を持って、12キロから16キロほど離れた山に入り、木を切る。薪はリュックサックに詰めたり、自転車の荷台やそりに載せたりして持ち帰る。これを2〜3日に1回繰り返すのだ。ちなみに、一冬を越すのに必要な薪は、4立方メートル(約1.4トンから2.2トン)ほどになる。
(参考記事:北朝鮮で「銃声のしない戦争」金正恩の過激な山火事対策)経済的に豊かなはずの羅先(ラソン)の住民も、薪拾いのために山に入ると、現地の情報筋が伝えた。石炭価格の上昇のせいだが、今年の冬は非常に寒く、例年なら1週間に2回山に入ればよかったのに、今年は2日に1回は行かなかければ寒さに震えることになる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面なお、金正恩総書記の緑化政策に反するため、山での薪の切り出しは厳しく禁じられている。違反者は教化所(刑務所)に入れられることもある。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
ただ、原木に手を付けず、低木や枯れ枝を切り出す程度なら黙認されているようだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面薪がなければどうなるのか。清津(チョンジン)よりはるかに寒い両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が、薪すら買えない人々の暮らしについて伝えた。
経済力のない人々は、夫婦共働きで薪拾いに行く時間的余裕はなく、市場で買おうにも1立方メートルで29万北朝鮮ウォン(約4930円)もする。コロナ前と比べて2倍以上も上がっている。1日の収入が1000北朝鮮ウォン(約17円)ていどしかない人々にはとても手が出ない。
少しの薪を使って朝にコメを炊き、その予熱で翌朝まで耐える。だが、氷点下30度の寒さに耐えられるわけもなく、ゴミ捨て場をあさり、燃えそうなものを拾い集めて焚口に入れて燃やしたり、布団を何重にも被ったりして、生き残ろうと必死だ。
そんな中、先月3日には、恵山(ヘサン)市の恵城洞(ヘソンドン)のある人民班(町内会)で、家族4人が意識を失った状態で発見される事件が起きた。
(参考記事:覚せい剤で一酸化炭素中毒を治す北朝鮮式治療法)極貧で薪すらなく寒さに耐えていた一家だが、隣人から練炭をもらい、火を付けた。ところがあまりにも長期間、竈を使っていなかったため、煙突が氷結しており、一酸化炭素が家の中に逆流したため、一酸化炭素中毒となったのだ。
幸いにして別の住民に発見され、病院に搬送されたおかげで、一命をとりとめた。