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儒教の経書の一つ、礼記(らいき)には、次のようなくだりがある。

六年にして之に数と方の名を教え
七年にして男女は席を同じゅうせず
食を共にせず

これが、男女がみだりに同席してはならないという意味合いの「男女七歳にして席を同じゅうせず」の元となっていて、後世の書物でも繰り返し説かれている。

韓国では1990年代までしばしば聞かれ、1999年に制定された公衆衛生管理法の施行規則の「7歳以上の男女を混浴させてはならない」という条項も、このような考え方が影響を与えたと思われる。(2003年に5歳以下に改定)。

朝鮮半島の基層文化としての儒教は、北朝鮮の言う「社会主義生活様式」にも大きく影響を与えている。その一つが、「未婚の男女が同棲してはならない」というものだ。結婚前の同棲はごく当たり前のこととなっているが、当局はたびたびこれを取り締まっている。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

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恵山(ヘサン)市安全部(警察署)は最近、未婚の男女が同じ家で暮らす行為に対する取り締まりを行っている。未婚男女の同棲を社会主義生活様式にそぐわない「非社会主義行為」(風紀の乱れ)とみなし、取り締まっているのだ。家族法第11条に「結婚登録をせずに夫婦生活をしてはならない」とあり、これが法的根拠となっているものと見られる。

しかし、婚姻届を出さずに同棲するケースは近年増えている。

そのほとんどが20代から30代で、まずは一緒に住んでみて、相性を見極めるというものだ。最近では40代、50代の離婚経験のある人の間でも、結婚前の同棲が広がっている。一度目の結婚に失敗した教訓からだろう。

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離婚は社会悪とみなされており、当局は離婚した人を労働鍛錬隊(刑務所)送りにしている。DV被害者の多くは女性だが、離婚を先に申してた方が罪が重くなるため、受刑者は女性の方が多いとの情報がある。

(参考記事:北朝鮮の女囚たちが落ちた「緩慢な処刑」の残酷な日々

当局が離婚を無理やり防ごうとするのは少子化対策の一環だが、それが逆に結婚・出産をせずに同棲する男女を増加させている。

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「結婚より同棲を望む人が増えた理由は、うかつに婚姻届を出せば、問題が生じても中々離婚できないから」(情報筋)

また、結婚観の変化も背景にあるようだ。

「今では昔のような、ひとりの相手と一生添い遂げるという認識が消えた」
「最近の人は、(結婚より)同棲を好むが、国は依然としてこれを危険な現象とみなし、安全部に同棲集中取り締まりという馬鹿げたことをやらせている」
(情報筋)

社会の変化に伴い、北朝鮮の人々の考え方も変わりつつあるが、当局は旧態依然とした結婚観、家族観にしがみつき、人々を苦しめ、むしろ少子化、晩婚化、非婚化を誘発してしまっているのだ。

安全員(警察官)は今月6日から、市内の人民班の班長(町内会長)と共に、同棲容疑がかけられた人を訪ね、15日以内に婚姻届を出さなければ法的に処罰すると警告している。思想闘争会議(吊し上げ)にかけて、徹底的に批判して恥をかかせた上で、労働鍛錬隊送りにするというものだ。

これに対して同棲カップルは、片方が一時的に避難する方法で、摘発を逃れようとしている。

男性と同棲中の20代女性はこのように語った。

「人民班長と安全員が1日に何回もやって来て、婚姻届を出せ、さもなくば処罰するぞと迫る。取り締まりが収まるまで実家に帰るつもりだ」

1980年代までは、戸主である夫が職場から家族の分まで合わせて食糧配給を受け取っていたため、結婚するメリットがあったが、配給がもらえなくなったり、もらえても本人分だけになったため、結婚したところで特にいいことはないのだ。

(参考記事:北朝鮮の人々が食糧配給の正常化を毛嫌いする理由

夫が職場で受け取る給料も非常に少ないため、妻が市場で商売して稼いで一家を支える。結婚、出産すれば妻の肩にのしかかる負担は非常に重くなる。出産しても託児所がまともに機能していないため、妻は子どもをかかえて商売するしかない。

安心して結婚、出産、育児を行えて、相手と合わなければ何の問題もなく離婚する。そんな環境を整えずに、結婚を強制する北朝鮮の少子化対策がうまくいくわけがないだろう。