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腸チフスはチフス菌、パラチフスはパラチフスA菌によって引き起こされる感染症だ。感染者の便に汚染された水や食べ物などを通じて感染が広がる。

大雨による浸水の後は、糞尿のたまったトイレやタンク、下水などから水が溢れ出るため、感染が広がりやすい。

7月末の大雨で甚大な被害が出た北朝鮮北部の慈江道(チャガンド)では、被災から3カ月近く経ったのに、新たにこれら感染症が拡散している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

現地の情報筋によると、慈江道水害復旧委員会と慈江道衛生貿易所は今月2日、腸チフスとパラチフスの感染拡大を受けて、非常対策会議を開いた。それをもとに特別防疫対策委員会が立ち上げられた。

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実のところ、感染症の蔓延は今に始まったことではない。水害の直後に復旧工事に多くの突撃隊(半強制の建設ボランティア部隊)の隊員や建設労働者が現地入りしたが、彼らの間では急性大腸炎と下痢が絶えなかった。そして、9月に入ってから腸チフスとパラチフスが流行りだしたのだ。

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ただし、道全体で流行っているのではなく、水害復旧工事が行われている最大都市の江界(カンゲ)、洪水を起こした将子江(チャンジャガン)流域の長江(チャンガン)、時中(シジュン)などに限られる。被災地でなくともトイレなどの衛生環境が劣悪な北朝鮮で、工事現場の状況がどうであるかは想像に難くない。

拡散を防ぐために、人口の移動統制が取られた。

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対象地域の住民と突撃隊員は、通常の旅行証(国内用パスポート)に加え、特別防疫対策委員会が発行した「衛生防疫証」がなければ、市や郡の境界線を超えることができなくなった。

また、住民には、水を必ず沸騰させてから飲むように呼びかけ、突撃隊が寝泊まりしているところには、お湯を沸かすための電気ヒーターを設置した。それでも新たな感染者は減っていないという。

情報筋が理由として挙げたのは、なんと浄水装置という笑えない冗談のような話だ。

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「薪不足で水を沸騰させるのが難しい上に、突撃隊の宿舎に設置された浄水装置がむしろ感染症を広げている」

この浄水装置は金正恩総書記の自慢のもので、今年8月、突撃隊員に対する「ご配慮」により宿舎に設置された。国家科学院咸興(ハムン)分院が独自に開発したとされるが、浄水速度が遅く、フィルターの交換が何らかの理由でできないため、病原菌もろ過できないという。

だが、病原菌だけで病気が発生するわけではない。

別の情報筋によると、長江郡の長坪里(チャンピョンリ)に駐屯している党員突撃隊の龍林(リョンリム)郡大隊の隊員11人が、腸チフスにかかり、もともとは結核病院の第3予防院の病棟を利用して設置された隔離部屋に運び込まれた。

彼らは、「被災者向けの住宅建設を今年中に終えよ」との命を受け、朝6時からよる9時まで毎日15時間働かされている。食事はコメとトウモロコシが半々のトウモロコシ飯と、シレギ(乾燥させた大根の葉)が入った味噌汁だけだ。

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また、宿舎からトイレまで50メートルしか離れておらず、食堂にもトイレにも下水処理施設がないため、両方の下水が混じって川に流れ込む。その水を飲料水として使っているのだろう。それでチフスの感染が広がるということだ。

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しかし、当局の対策は的外れた。

「感染症の拡散を防ぐためとして、突撃隊の宿舎と建設現場周辺にいた、茹でたジャガイモとトウモロコシを売っていた商人を追い払ってしまったが、そのせいで突撃隊員の栄養状態がさらに悪くなり、より一層感染症にかかりやすくなるだろう」(情報筋)