北朝鮮は今年の前半まで、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」と同程度の食糧難に見舞われているとされていた。実際、餓死者の発生を伝える情報も少なからず伝わっており、国民は相当な苦しみを味わったと見られる。
しかし今年の農産物の収穫は、例年に比して豊作だったと見られており、食糧難はいくぶん緩和したようだ。今年は台風の季節に、過去数年ほどの被害が出なかったことも幸いしたと見られる。
金正恩総書記は、年末に開かれる党の重要会議で、これを自らの業績として前面に押し出す可能性が高い。
実際、金正恩氏は「農業第一主義」を掲げ、増産に取り組んできた経緯がある。そして、その過程では少なくない犠牲者も出ている。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞はおよそ1年前の2022年12月12日、「今年の農業は自然との戦争過程だったと言っても過言ではない」として、「春先から秋にかけて日照り、洪水、雹、冷害を始めとした災害性気象現象が現れ、日照率も非常に低かった」「特に8月末から9月中旬に季節外れの冷害に襲われ、農業勤労者が口をそろえて語るように、数回の台風よりも悪影響が大きかった」と報じている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そして、不作の責任は幹部になすりつけられ、粛清の嵐が吹き荒れることになった。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によれば、朝鮮労働党平安南道委員会の年末総和(決算)では、農業部門の幹部34人が粛清された。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面昨年までの不作は自然災害に加え、新型コロナウイルス対策の国境封鎖により、肥料や営農資材の輸入が止まっていたことにあると、北朝鮮国民は誰でも知っている。つまり、個々の幹部にとっては不可抗力に近い状況だったのだ。
それでも、金正恩総書記が掲げる最重要課題を遂行できなかったことは、その理由がいかなるものであれ「罪」となる。
そして来年だが、金正恩氏は今年の「成果」を土台に、さらに高い目標を掲げるだろう。その達成が幹部らに重くのしかかるのは言うまでもない。農業がうまく行っても行かなくても、現場の幹部は憂鬱な日々を過ごさねばならないのだ。