順調な開発が伝えられていた韓国の次期戦闘機・KF-21が、ここへきて思わぬ壁にぶつかっている。韓国国防省と空軍はこれまで、来年から量産が開始される初回バッチ分として40機を2026年~2028年に導入予定だったが、日本の財務省に当たる企画財政省が、そのための予算を半分の20機分に削ってしまったのだ。
理由は、政府の韓国国防研究院(KIDA)が事業妥当性調査を行った結果、対地攻撃兵器の運用能力の確認が不十分な状態で40機を量産するのはリスクが高いと判断したためだという。これに対しては国防省と空軍などの反発が強く、空対地兵器の発射能力が検証されれば、2025年に20機を追加導入するというオプションが付いている。
しかし、たった1年で空対地兵器の運用能力を確立するのは難しいとされており、追加導入のハードルは高いと言えるかもしれない。
(参考記事:「性能が貧弱すぎる」韓国の戦闘機計画からインドネシア離脱か)
そもそもKF-21の開発計画は、初回バッチ「ブロックⅠ」の40機では空対空戦闘能力を先行して備え、これに続く「ブロックⅡ」で空対地攻撃能力を確立して80機を量産し、計120機を空軍が調達するスケジュールで進められてきた。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面だから開発に携わる関係者にとって、KIDAの調査結果は「ちゃぶ台返し」に等しいものと言える。
いったい何故、KIDAはこのような挙に出たのか。ハッキリしたことはわからないが、韓国のある経済記者はこんな推測を語ってくれた。
「黒幕は企画財政省ではないかと思っています。わが国は近年、財政赤字が急速に膨らんでいる上、来年春には総選挙があります。政府与党が選挙を前に『バラマキ』をしたがるのは韓国も日本と同じ。そのため『いま削れる予算は削りたい』と考える企画財政省がKIDAに影響力を行使し、予算削減の根拠となる調査結果を求めたのではないでしょうか」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面あくまで記者の個人的な推測だが、あり得ない話でもなさそうだ。
いずれにしても、今回の予算削減は韓国の安全保障に、いくつかの「実害」をもたらす可能性がある。
第一に、KF-21と交代する予定となっている、老朽化したF-4とF-5の退役がますます遅れるかもしれない。特にF-5は、2000年以降に墜落や衝突を起こした事故機だけで15機に達し、操縦士16人の命が失われた。現在の戦力差を考えれば、仮に韓国空軍と北朝鮮空軍が全面戦争になっても、韓国側にこれほどの犠牲者が出ることはないだろう。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面第二に、費用の増大だ。40機分のパーツを注文するより、20機分の方が単価が高くなるのは資本主義の常識だろう。
そして第三に、せっかく輸出で快進撃している韓国防衛産業のイメージダウンだ。莫大な費用のかかる戦闘機開発は、一定数量を不出しなければ元が取れない。しかし、身内から「リスクが高い」とケチのついた戦闘機に、率先して触手を伸ばす国があるだろうか。
特にKF-21を巡っては、共同開発国であるインドネシアが、分担金の滞納を続けている問題がある。こんなことになっては、インドネシアに「払わない理由」を提供しているようなものだ。
もっとも、尹錫悦大統領が強力な意思を示せば、来年からの量産予算の配分が、土壇場で変わる可能性もゼロではない。野党も量産推進の立場だ。果たしてどうなるだろうか。