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北朝鮮の首都・平壌には地下鉄2路線をはじめ路面電車、トロリーバス、バスなど多数の公共交通機関がある。また咸興(ハムン)、清津(チョンジン)、新義州(シニジュ)など地方大都市や、重要な大規模工場が存在する地域には、限定的ながら公共交通機関が存在する。

しかし深刻な電力と燃料の不足により、まともに運行されないことも多かった。そんな中、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)に、史上初の国営バスが開通したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

現地の情報筋は、11月からガソリンで動くバスを使った国営バスのサービスが始まったと伝えた。ルートは、順川駅ーC1化学工業団地ービナロン工場ーセメント工場ー蓮浦洞(リョンポドン)ー燐酸肥料工場だ。

情報筋によると、順川市内で公共交通機関が登場したのは初めてだという。平安南道では、道庁所在地の平城(ピョンソン)でトロリーバスが運行されているのを除けば、公共交通機関は存在しなかった。安州(アンジュ)と徳川(トクチョン)にもトロリーバスがあったが、それぞれ2000年と2014年頃から運行がストップしてしまった。

(参考記事:北朝鮮のトロリーバス運賃「200倍値上げ」の背景

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その穴を埋めていたのは、「ボリバス」「ソビ車」と呼ばれる、トンジュ(金主、ニューリッチ)が国営機関の名義を借りて運営する事実上の民営バスだ。トンジュがバス車両とガソリンを購入して運行し、収益の5から10%を税金として納めるものだ。

国営バス路線には平壌バス工場製の大型バスが3台投入され、運行間隔は午前7時台と午後6時から8時までは20分毎、昼間は1時間毎だ。一方で民営バスは乗客がいれば随時運行するので、使い勝手が良い。ただ、運賃面では国営バスに負けている。

別の情報筋によると、国営バスの運賃は500北朝鮮ウォン(約8.5円)と非常に安く、5キロから10キロまで2000北朝鮮ウォン(約34円)、20キロ以上は5000北朝鮮ウォン(約85円)の民営バスはかなわない。

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今のところ民営バスを脅かすほどの存在ではないが、今後路線や投入されるバスの台数が増えるとすると、民営バス業者は業種変更や差別化によって競争力を持たなければならないだろうと、情報筋は見ている。

なお、今回の国営バスの運営主体は不明だが、民間に奪われていた利権を国に取り戻そうとする流れの一環である可能性がある。

(参考記事:本腰を入れて市場を潰しにかかる北朝鮮の「計画経済回帰策」