北朝鮮が9日、またもや弾道ミサイルを発射した。米国で中間選挙の開票が進む中での発射は、いつでも軍事行動をとり得ることを強調したものと見ることもできる。ただ、こうした金正恩総書記の暴走には、軍内部からの懸念の声が上がっているもようだ。
今月1日、北朝鮮の朴正天(パク・チョンチョン)朝鮮労働党書記は米韓両空軍による合同軍事演習「ビジラント・ストーム」に対して「侵略的かつ挑発的な軍事訓練」だと非難する談話を発表した。同氏は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の戦闘部門トップである総参謀長を歴任した人物だ。
談話は「敵対勢力の度を超える軍事的対決妄動によって、今、朝鮮半島に重大な事態が生じている」としながら、ビジラント・ストームに対して「徹底的にわが共和国を狙った侵略的かつ挑発的な軍事訓練」と強調。
そのうえで、「米国と南朝鮮が恐れずわれわれに対する武力使用を謀るなら、朝鮮民主主義人民共和国武力の特殊手段は課された戦略的使命を直ちに実行するであろうし、米国と南朝鮮は恐るべき事態に直面し、史上最もぞっとする代償を払うことになるであろう」と警告した。
だが、談話の勇ましさとは裏腹に、北朝鮮軍内部では今後を憂える声が出たという。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、北朝鮮内部の情報筋によるものとして、この談話に対する軍幹部らの反応を次のように伝えている。
「軍部隊の幹部たちは、ミサイルを撃ちまくって戦争の雰囲気を助長すれば、制裁が強化されて経済がさらに苦しくなるだろう。そうなれば兵士たちに供給する衣服や食糧はもちろん、各種戦闘装備が不足して軍人たちの士気も落ちる。果たして現在のような戦略的対応は正しいのかと疑問を呈している」
「最強」を自任して隣国に攻め込んだロシアが、国際社会の制裁により生産力を落とし、前線への供給に苦しんでいるのは周知のとおりだ。備蓄・生産力ともにロシアに及ばないと見られる北朝鮮で、軍幹部らがこうした懸念を表すのは、しごくもっともな反応と言える。
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だが、恐怖政治で権力への「意見」すら抑えつける国家で、こうした直言が独裁者の耳に届くことはない。独裁体制を弱体化させるのは結局、反体制活動でも対立する国家からの攻撃ではなく、体制が内部に抱え込んだ深刻な矛盾なのだ。