北朝鮮「極寒の地」で吊し上げられた、ある労働党員の受難

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韓国人は一般的に、北朝鮮の地理にさほど詳しくないが、そんな人々でも知っている田舎町がある。中江鎮(チュンガンジン)。現在は慈江道(チャガンド)の中江郡に改称されたが、朝鮮半島で最も寒いところで、かつては韓国のテレビの天気予報でも、平壌などと合わせて毎日取り上げられていた。

そんな極寒の中江で、空気が凍りつくような事件が起きた。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

朝鮮労働党の部員(指導員)のA氏は今年9月、辞令を受けて、朝鮮労働党中江郡委員会に赴任した。住む家を探していたところ、ちょうど安く売りに出された家があったので、売り主の女性B氏と話をした。「家を売ってどこか住むあてはあるのか」と尋ねたところ、「妹と同居することにしたので心配は要らない」との答えが返ってきたので、安心して家を購入した。

ところが先月12日、A氏宅に保衛部(秘密警察)が乗り込んできて、彼を緊急逮捕した。連れ去られた彼は、行方がわからなくなっていたが、それから9日後に人々の前に姿を現した。

慈江道保衛局主催の中江郡公開闘争会議の場に引き立てられたのだった。つまり、吊し上げの場だ。

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中江郡保衛部は「怪しいと思って通報できたのではないか」とA氏を厳しく批判した。保衛部はB氏が家を売り払った後、子どもとともに姿を消したことを把握した。北朝鮮で行方不明は、無断で居住地を離脱した違法行為であると同時に、脱北の可能性があるとして、政治的事件として扱われるのだ。

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報告を受けた慈江道保衛局は、この事件をきっかけに住民に対して警告を発する場が必要と考え、公開闘争会議を開いたという流れだ。

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A氏に対する批判の場では、郡内の居住地登録手続きを改めて確立し、住宅を売買する行為を厳しく遮断するとの言明があった。そもそも不動産の売買は違法行為だが、居住権を売買する形で行われている。そしてこれが、食い詰めた人が家を売り払って地域から出ていくことを促し、行方不明者の量産につながるとして問題視されてきた。

なお、現在人口3万あまりの郡内には30人の行方不明者がいて、住宅の密売など非社会主義現象との闘争を繰り広げると強調した。

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A氏は結局、B氏が行方不明になることを予見できなかったとして、脱北の幇助に関しては罪を問われることはなかったが、違法に家を購入したことは非社会主義だとして、部員を解任され、4カ月の労働鍛錬刑(懲役刑)の処分を受けた。

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朝鮮労働党慈江道委員会は、今回の事件を深刻に受け止め、保衛局や安全局(県警本部)と合同で、11月の1カ月間、住民の居住実態を調査する住民登録事業を行うよう指示した。

なお、子どもと一緒に姿を消したB氏は、未だに所在が確認できておらず、保衛部は全国の捜査機関に情報を共有し、指名手配を行った。これは他の地方に行ったという意味ではなく、脱北と断定したということだと情報筋は説明した。