金正恩総書記が、去年3月に打ち出したメガプロジェクトの「平壌市1万世帯住宅」。市内の5つの地区に、2025年までに合計で7万世帯の住宅を建設するというものだが、最初に着手されたのが、郊外の寺洞(サドン)区域の松新(ソンシン)・松花(ソンファ)地区。
その工事が終わり、1万世帯の住宅が完成したと、国営の朝鮮中央通信が今年4月に報じている。
完成したばかりの住宅だが、さっそく欠陥住宅であったことがバレてしまった。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
地区の「目玉」である80階建てのタワマンで、先日の大雨と強風で、窓枠から雨漏りする家や、天井裏が水浸しになる家が続出。また、廊下でも雨漏りが起きているとのことだ。
(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面住民からは、人民班長(町内会長)を通じて、苦情の声が殺到している。
「今まで生きてきて、窓枠から雨漏りしたのは初めてだ」
「家財道具をすべて片付けて、雑巾と布巾で塞いだ」
「最上階の部屋は、天井からの雨漏りがひどい」
「入居して2ヶ月なのに、なんということだ」
さらには、強風で屋上にあった排気ファンと送風モーターを覆っていた山型の鉄板が吹き飛ばされ、その下にいた人と車にあわや直撃という事故も起きている。
朝鮮労働党の寺洞区域委員会と人民委員会(区役所)は今月2日、洞事務所(末端の行政機関)で緊急災難収拾会議を開き、対策として、区域の建物補修事業所に、屋上と階段の防水工事をやり直させることとした。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、窓枠の防水の手抜き工事による雨漏りに関しては、居住者が修理せよと、事実上放置している。ただし、入居者の中でも栄誉軍人(傷痍軍人)、功労者、高齢者、無依無託者(経済活動ができない人)などに対しては、洞(町内)の党書紀、事務長、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)の委員長などが訪問して、被害状況を把握するなど、配慮を行っている。
いずれも、昨年末に行われた入居者の選定で、4番目に優先された対象だ。ちなみに最も優先されたのは、元々この地域に住んでいた住民、次いで地元に基地がある航空・反航空軍(空軍・防空軍)の後方司令部(兵站部署)傘下の工場の従業員、高位幹部に供給する8号、9号製品を生産する護衛局傘下の食品工場の従業員だ。
雨漏りがひどいという話は、地域全体に広がり、「外見がかっこいいからと、それに何の価値があるのか」「国が責任を問わないから、建設がいい加減に行われる」などと言った声が上がっている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面また、「住宅何万世帯という数字が大切なのではない」「こんな風に建てるのなら、建物の数を減らして質のいいものにしてほしかった」との声も上がっているという。