金正恩体制、水面下で進む危機…「田植え戦闘」コロナで打撃

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北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会が29日、金正恩総書記の指導の下、党中央委員会本部庁舎で協議会を開催し、新型コロナウイルス対策などを討議した。

協議会では国家非常防疫司令部の集計として4月末から5月28日まで累計約344万8880人の発熱患者が発生したと報告された。

数字は大きいが、今のところ、新型コロナの拡散によって金正恩体制が揺らぐような事態にはなっていないと見られる。協議会でも、94.602%に当たる約326万2700人が全快したとして、感染拡大が抑え込まれている状況が示唆された。

しかし本物の危機は、時間をおいてやってくるかもしれない。

北朝鮮では例年と同様に、今年も5月から都市住民などを一斉に動員して農場に送り込む「田植え戦闘」が始まっている。しかし、コロナ対策として移動禁止令を出したために、田植えをする人手が足りないと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

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地域間移動が完全に禁止され、市や郡の境界線外への動員が中断されたことで、農場は完全に当てが外れてしまった。結局、農場の人員だけで田植えをするしかない状況となっている。

今月初めに、黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、都市部から労働者や学生らを動員したとしても、必要な人手の1割にも満たない。現在では動員が一切できなくなってしまったことから、ただでさえ足りない人手が、さらに足りなくなっているという。

また、コロナ感染を恐れ、それを理由に動員に応じない人も多く、田植えに深刻な影響が出ているようだ。

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北朝鮮の農業は機械化が進んでおらず、人手に頼らざるを得ないのが現実だ。一部で機械が導入されているものの、コロナ鎖国により部品が不足しており、事故や故障が多発している。

一方、都市部の若者が「自ら嘆願した」ということにして農村や炭鉱に送り込み定住させる「嘆願事業」や、兵役を早期終了した元兵士を集団でこれら地域に送り込む「集団配置」が大々的に行われているが、順調に進んでいないと伝えられている。

結局のところ、田植えのためには一時的な動員に頼らざるを得ないのだが、今まではなんとかなっていた動員すらできなくなり、今年の収穫が懸念される。

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(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為

ただでさえ、コロナ対策の国境封鎖・貿易停止で北朝鮮の農業生産は減少している。食糧難の深刻化も伝えられている。田植えまでが満足に行われなければ、飢餓により体制が大きな危機を迎えるかもしれない。