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氏名: チョン・ギテク
年齢: 40代中盤
職業:  咸鏡北道○○工場 電気修理工
居住地:  咸鏡北道 清津市

-出勤している工場はきちんと運営されていますか?

-(北)朝鮮では、地方工場に電気を一部供給している。それでも資材や原料が不足しているために実際に稼動している場所はほとんどない。そういったものが保障されたとしても、機械がしょっちゅう故障して止まってしまう。電気も1ヶ月の消費量が決まっている。電気も、まず軍需工場に送って残りを他の工場に送っている。私が働いている工場も運営されていない。労働者達は出勤してもすることがないので、農村支援に出ている。

-工場に行く必要はないのではないですか?

-工場が止まって仕事がなくても出勤しなければいけない。無職者がいてはいけない。出勤のハンコをもらってまた帰ってくる。国家計画を達成しなければいけない。1日に割り当てられる量が100ウォンなのですが、1日中農村に行ってトウモロコシを売るなり何なりして100ウォンを稼いで国家に出さなければいけない。こういった国家計画が人々をとても疲れさせる。1週間に1回の生活総括、党員達の党生活、学習など全てがきつい。

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-配給の状況はどうですか?

-軍需工場の職員達、軍隊、国家保衛部(情報機関)、人民保安部(警察)を除いた労働者の配給は全て中断されている。配給が中断されていても国家計画に合わせるために国家と職場に穀物を捧げろと言われる。不合理だが仕方がない。不満を表すと損をするから。

-生計手段はなんですか?

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-商売をすることだ。他の地方や農村に行ってトウモロコシを安く売ってもらい、それを市場へと売り渡すことで中間利潤をもらっている。朝鮮では女性が商売をして苦労しながら生計を立てているいるが、トウモロコシを運んでいる途中に自転車が故障すれば、修理道具を使って自分で修理することもある。中国に来てみて思うことだが、中国の女性は不自由なく楽に暮らしているようだ。

-国家計画達成のために捧げるものは主に何ですか?

-朝鮮では人民達が食べて暮らすために、苦労してトウモロコシを売って、そのお金で鉄屑を持ってくる。お金を出して鉄屑を買ったとしても、それは元々国家の物なので、保安員達が没収しようととびかかってくる。保安部が1〜2人の巡察隊をつくって取り締まりをするのだが、人々は食べていかなければいけないので、彼らに賄賂としてたばこを1、2箱あげている。巡察を避けるために通りの様子をよくうかがって出てくる。(商売人同士)互いに安全かどうかを教えあうこともある。それなので人々は法官を嫌っている。

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-貨幣改革実施前後の民心の違いは?

-貨幣改革以降人々の暮らしが厳しくなったことで、民心がひどく動揺している。市場では、幹部の親戚や中国を往来して物を持ってくる人がお金を沢山稼いでいる。さらには1万5000ドル〜1万8000ドルを持って営業している人もいる。元手が多ければ、高くても良い物を売ることが出来るし、金塊や金鉱を保有しているお金持ちがそういったものをはばかることなく買っていく。元手の多い人はより沢山のお金を稼ぐことができる。農民や労働者は、1年一生懸命働いても配給と分配がないので、国家の仕事を怠けるようになる。国家からもらう肥料を自分の畑に使っている。自分に必要な分を自分でまかなう知恵がないと飢えることになる。そういう知恵のうちの1つが中国を通じた密輸だ。

-密輸する主な品目は何ですか?

-米や小麦粉も密輸するが、主に電池を密輸している。電気がちゃんと入ってこないので電池が人気だ。密輸をしても、国家保衛安全部の人も自分の力で生きていかなければならないので、知っている人に対しては見て見ぬふりをしてくれる。軍人達が中国で物を中継してくれるのだが、中国の業者が手数料を別にあげている。軍人達は服務期間中に中国人だけでなく朝鮮人達からもお金を沢山もらっている。

-韓国のドラマを見たことはありますか?

-「天国の階段」を楽しく見ていた。それを見て泣く人も沢山いた。高句麗時代がテーマの「朱蒙」も見た。DVDで見ていたが、停電するとDVDが壊れてしまうので、最近は停電しても引っこ抜いて使えるメモリーを利用している。本のようなコンピューター(ノートパソコン)で韓国映画や「朱蒙」などのドラマを見た。

-「朱蒙」を見ての感想を教えてください。

-去年「朱蒙」を見た。朝鮮人達も韓国が発展していることを知っている。朝鮮映画の「春の日のささやき」と「銀のかんざし」は日本で撮ったものだ。この映画は日本に直接行って撮ってきたものだったので、党員達にだけ見せてくれた。この映画の中に韓国人も登場するのだが、とても裕福な暮らしをしている。勘の鋭い人はそれを見て韓国人も良い暮らしをしていることに気付いた。

-「朱蒙」に出演している女優の中で誰が一番綺麗だと思いますか?

-「朱蒙」に出てくる女優はみんな綺麗だ。中でもャハン・イェジンが一番綺麗だと思う。

-普通はいつドラマを見るのですか?

-ドラマは昼でも夜でも電気が通る時に見ている。様子をうかがいながら見なければいけない。摘発されたら監獄に行かなければいけない。監獄を出ると、見るなと言われていてもまた見てしまう。

-DVDプレイヤーはどうやって手に入れるのですか?

-平壌に朝鮮合弁会社というものがあって、そこで当局が承認したDVDを製作している。それ以外は密貿易を通してDVDを購入している。DVDプレイヤーは登録さえすれば不法ではない。当局が翻訳して承認したロシアと中国のDVDは、朝鮮当局が承認したものだから(見ることができる)。それでも人々は韓国のものや他のものを見ようとする。最近ではUSBメモリーを使って見ている人も多い。

-メモリーは密輸されたものですか?

-密輸や貿易を通してメモリーが取引されている。USBを持つことは朝鮮では認められていない。したがって不法だ。まだ持っている人は多くない。大学生や軍人に多い。軍隊にはコンピューターがある。

-韓国映画だけでなくメモリーやDVDも不法ですが、これらをどうやって隠すのですか?

-自分用のものは持っていない。借りたものをみんなで回している。持ち主が誰かもよくわからないが、回して見ている場合が多い。

-韓国の歌を歌ったりダンスを踊る人はいますか?

-韓国の演歌(トロット)が多い。平壌では録音機で韓国の歌を流して遊んでいる人が多い。平壌では女の人がダンスを踊って歌を歌う。こういった本当に些細なことまで統制するから不満が募る。なので歌詞なしで音楽だけ流してダンスを踊っている。

-今の若者とあなたが若かった頃の間に違いがあるとしたらなんですか?

-違いが沢山ある。最近の若者は世界の情勢に敏感なので外見にとても気を使うが、金日成時代には考えられなかったことだ。

-中国では衛星TVを通じて韓国のドラマやニュースを見ることが出来ます。朝鮮とどんな違いを感じますか?

-中国も韓国も言論の自由があるが、朝鮮にはそれがない。(韓国では)大統領の批判もできるのに。

-朝鮮に自由がないということを、朝鮮にいる時も分かっていましたか?

-公式的な文書には言論の自由があると書いてあるが、朝鮮が独裁国家だということは分かっていた。真の言論もない。他の国には言論の自由があるけれど、金正日はそれを真似ようとしない。一般人にも言論の自由がないという認識がある。「井の中の蛙」のように統制の中にいることを分かってはいるが、申告の危険のせいで口に出すことが出来ない。朝鮮では1週間に1回行われる生活総括及び学習に参加しなければならず、参加しないと思想が曲がっていると批判される。上からの監視が徹底されている。何か他のことをする時間を与えてくれないので、自由がないことを人々も分かっている。

-1日3食食べていますか?

-朝は食べないことが多く、お昼を食べる。1日に2食ほど食べている。山菜をとってきてトウモロコシの粉と一緒に食べている。97〜98年には松茸をとって渋みを抜いたあと粉をのせて食べていたが、今もそうやって食べている人が多い。農村ではとってきた山菜や薬草を売ることもある。

-まわりの人達はどんなものを食べていますか?お米のご飯を食べている人はいますか?

-市場には韓国の米、中国の米、朝鮮の米があるが、うちには米がない。妻が市場で商売をして、(その稼ぎで)少し米を食べることもある。中国から送られてくる韓国の医薬品、服を売っているが、取り締まりにひっかかることもある。月給だけでは生きていけない。1ヶ月の給料は2,000ウォンだが、朝鮮のお金で米は2.300ウォン、トウモロコシは1,200ウォン、豚肉は5,000ウォンだ。その月給も、国家にお金が不足しているときは(支払いが)遅れる。1、2ヶ月分をまとめてもらう時もある。

-3食食べることの出来る人は多いですか?

-市場で上手く商売をやっている人は3食食べることが出来るが、元手がなく商売を思うように出来ない人は3食食べることが出来ない。軍にまわる食糧のうちの2%でも国民に分配されるようになれば配給をきちんともらえるだろうに、という話もある。中国に来て初めてタラを食べた。金日成時代にも、あまりにも高いので朝鮮では中々食べることが出来なかった。

-貨幣改革以降の民心はどうですか?

-初めは国家が交換してくれるという話を聞いて、これから暮らしがよくなるだろうと希望を持っていたが、今は不満が増えている。耀徳収容所や政治犯収容所に連れて行かれでしまうので、不満を口に出すことは出来ない。

-政治犯収容所があることは知っているのですか?

-知っている。政治犯収容所で麻薬も作っている。

-韓国には政治犯収容所から脱出してきた人が沢山います。

-韓国では政治犯収容所にいたと言うと、よくしてくれる傾向がある。家族みんなが収容されるなどの経験は本当に辛いものだ。

-貨幣改革以降と苦難の行軍の時期を比べると、どちらがより大変ですか?

-今の方がもっと大変だ。貨幣改革以前は物価が安定していたが、貨幣改革以降は不安定だ。商売が出来ない。国家は対策を立てると言っているが、特に変わったことはない。平壌、南浦ではドルと元の価格が不安定で、全てが大変だ。

-貨幣改革の時、ショックが大きすぎてもらったお金を全部破ってしまったという奄?キいたことはありますか?

-ある。国家が人民達との約束を破ったのはいけないことだ。

-苦難の行軍の時期よりも飢え死ぬ人は少ないのに?

-97年の苦難の行軍の時は老人や子供達が配給と党、首領だけを信じた結果、配給が急に途切れたので、どうやって生きていけばいいか分からずに飢え死にした人が多かった。市場も当時はまだ種を売るくらいの役割しかしていなかった。その時から中国を通じた密輸が増加し始めた。私が密輸をしたとして、100ウォンで買った物を200ウォンで売る。けれど貨幣改革のせいで(市場が打ち切られ国境での取り締まりが厳しくなり)人々が生きる術を探すことが出来ない。

-今では国家への依存度や信用が低いと思います。

-そうだ。以前は金日成が最高だったが、今や国家は何もしてくれないし、最大の慶事である金正日の誕生日の時も何もくれない。これからは国家を信じずに自分の力で飢え死にしないように生きていかなければいけない。

-そういった不平不満を表した落書きなどを見たことはありますか?

-まだそういうものは見たことがない。別の場所でどこかに書いてあったという話は聞いたことがある。3年前の話だが、安全部(警察機関。旧:保安省)で裁判をしたそうだ。

-北朝鮮で麻薬中毒が深刻だという話が出ていますが。

-麻薬が大きな問題になっている。私の家族には若者がいないからなのか麻薬をやっている人はいない。香港映画を見ているとヒロポンを吸っているシーンが出てくるが、若い人達はこれを見て真似しているようだ。