北朝鮮が繰り返し強調している自力更生。紀元前中国の漢の時代から存在する言葉だが、日中戦争中に中国共産党が打ち出してから、頻繁に使われるようになった。北朝鮮でも時代によって濃淡があるが、最近は国是と言っても過言ではないほど繰り返されている。
国際社会の制裁、コロナ鎖国の中で、知恵をひねり出して新たな技術を作る運動が繰り広げられているが、そこから様々な弊害が生れている。
(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】自力更生を叫んでばかりの政府は無能)
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋は、自力更生によって生み出された技術が、むしろ効率を下げている実態を伝えた。
价川(ケチョン)炭鉱聯合企業所では先月23日、生産総和(総括)が行われた。そこでは石炭生産実績が下がったことについて問題提起がなされ、非常に深刻な空気が流れる中で話し合いがなされた。正確な数字はわからないが、国から示された生産目標が達成できなかったのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面その原因の一つとして示されたのは、削岩機の故障による稼働率の低下だ。この炭鉱で主に使っている削岩機の性能は酷いと情報筋は評した。
慈江道(チャガンド)の前川(チョンチョン)削岩機工場で製造されたこの削岩機だが、精度や耐久性に難があり、石炭生産実績に影響を与えるほどだった。新しく部品を入れ替えても数時間で故障し、1年もすれば使えなくなるものが多いという。自力更生の結果として生み出された技術で、国産素材を使って製造した部品は、強度が弱く、精度が保障されていないというのが情報筋の話だ。
国産技術が低いもの、国内では得にくい原材料は、コロナ前までは主に中国からの輸入に頼っていた。しかし2020年1月以降のコロナ鎖国で一切輸入されなくなり、その穴を埋めるための自力更生というわけだが、技術が低い上に、高い技術があったとしても原材料が得られず、まともな製品が製造できず、それが炭鉱の生産実績に影響を与えるという悪循環に陥っているのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面同様の理由で生産不振に陥っている炭鉱は价川だけではない。同じ平安南道の順川(スンチョン)炭鉱も、資材と部品不足により、昨年11月の時点で、目標量の半分しか達成できなかったと、別の内部情報筋が伝えている。
(参考記事:「いつもの原因」でノルマが半分しか達成できなかった北朝鮮炭鉱)また、独自の新技術を早急に開発せよとのプレッシャーで、技術が確立していないうちに拙速に実験を行い、事故につながる事例も頻発している。
(参考記事:金正恩命令「深夜の実験」で大爆発事故…3000人死亡の惨事よぎる)