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最近は、北朝鮮軍の食糧難が深刻で、相当数の兵士が栄養失調状態にあり、一部の部隊では餓死者が発生していると伝えられた。

日本のアジアプレスの石丸次郎代表は11日、デイリーNKとのインタビューで「現在、北朝鮮で食糧難で苦しんでいる人はほとんどが兵士。劣悪な部隊の場合、半分以上の兵士が栄養失調状態にある」と述べた。

石丸代表は、北朝鮮内部の記者が撮影した動画や証言をもとに、北朝鮮軍と住民の最近の食糧事情や市場動向などを伝えた。

石丸代表によると、現在は軍で米が大幅に不足しており、「軍隊に行けば、栄養失調にかかる」との認識が住民の間で一般化されている。このため、兵士の脱走や住民の家畜を奪う行為が激化しているという。

栄養失調で療養休暇を取る兵士が続出…部隊からの脱走や盗難も

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1990年代の食糧難以降も軍内部の食料事情は良くなかったが、最近ではさらに悪化しているという。

石丸代表によると、平安北道に住むアジアプレスのキム・ドンチョル記者は「今年から食糧事情が悪くなった。護衛司令部の将校が今年1月に『1日の食糧補給はトウモロコシ300gだけだ。これは栄養失調にかかるレベル』だと述べた。1月でこの状態なら、春窮期の今は食糧事情がさらに悪化しているだろう」と伝えた。

両江道の通信員のチェ・ギョンオクさんも「旅団指揮部の兵士は1食にトウモロコシ米160gと醤油を固形化した物が配られている。待遇がいい指揮部でさえこの有様で、一般の部隊では1食に130〜140g、おかずは塩水だけ」と軍内部の食糧状況を説明した。

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「2月末頃に江原道通川郡で服務している若い兵士と会ったが、『栄養失調にかかって家で療養している』と話した。その兵士から部隊内部で餓死する人もおり、一さじの塩を4人の兵士が分け合って食べているという話を聞いた」と付け加えた。

石丸代浮焉u北朝鮮の各部隊では食糧難を解決するために、夜中に住民の家畜や食料を盗んでいる。各中隊の指揮官が中隊員に野菜やおかずの確保を命じ、兵士らは各家庭を回って頼んだりしている」と説明した。

アジアプレスが、今年初めに入手した北朝鮮内部の動画には、栄養失調にかかった痩せ細った兵士10人余りが、どこかに護送される場面が収められている。この映像は、護送途中に休憩をを取る場面を撮ったもので、20代前半に見える若い兵士らは背も低く頬骨が飛び出しており、一目で栄養状態が良くないとわかる。

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石丸代表は「内部の取材記者が兵士を率いている将校に質問をしたが、答えを得ることが出来なかった。栄養失調と関連して、上部から箝口令が引かれたようだ」と話した。

軍部の食糧事情悪化から、北朝鮮当局は住民から強制的に米の徴収を行っている。

キム記者によると、今年1月から2月にかけて人民班に軍への支援を目的とした食糧供出の指示が正式に通達された。各世帯は1キロを納めなければならず、党や企業所の幹部は500キロを調達しなければならなかった。特に、商売人からは軍への「愛国米」を強制的に徴収している。

先月4日、中央放送は「平壌市郡民大会」と関連し、「農業労働者は、今年の農業生産で決定的な転換を起こし、我々の軍隊に多くの軍糧米を提出する闘争に貢献するだろう」と報道した。
 
4月25日の人民軍創立日には、各世帯がトウモロコシ300gとおかずを持って軍部隊の慰問を行う様に指示が下されたという。住民たちは「強盗の様な軍」と不満を述べたと内部の記者らは伝えた。

石丸代表は「金正日政権は先軍政治を展開しているが、軍隊にきちんとした食糧も与えられない状態。政府の力が弱まり資金不足から食料を与えられずにいる。食糧を確保するために、今年初めから外部に食糧支援を要請している」と指摘した。

商売が出来ない軍人や軍需工業労働者が社会的弱者に転落

また、優先配給対象の軍需産業労働者も、当局の支援が中断されている。輸出用製品を生産している外貨稼ぎ企業ですら、食糧配給状況は劣悪であるという。

キム記者は「平安南道順天地区の炭鉱の場合、昨年までは労働者に配分の80%程度が支給されたが、家族への配給は行われず、ほとんどの妻たちは商売をしている。しかし、これも今年に入って減少し、3月と4月には10日から15日分しか配給されていない」と伝えた。

続いて「現在、炭鉱労働者の平均的な食事は、トウモロコシ、米、残りはトウモロコシで作った麺やお粥を食べている。貧困層は1日に1食だけを食べ、トウモロコシ粥で延命している状態」と付け加えた。

石丸代表は貨幣改革以後、住民の生活がさらに困窮し、これによって市場にはコチェビ(ホームレス少年)が増えていると伝えた。貨幣改革で多くの商人が破産し、現在も貨幣改革前の60〜70%程度しか市場の活動は回復していない。

内部の記者によれば、貨幣改革の影響で家族が崩壊しコチェビが増加したという。商売の失敗や借金によって家庭が崩壊したのが原因だという。

特に、最近では、コチェビらは食料を求めるのではなく、食料を購入するために金を求める傾向だという。これは北朝鮮で餓死者が発生する原因が、米の絶対量が不足しているからではなく、米を買う金が無いからであるという点を示す事例である。

これについて石丸代表は「現在、北朝鮮で商売をしていない層、つまり、軍需産業労働者や兵士が一番の社会的弱者となっている。市場には米があふれているが、これを買う事が出来ない為に餓死している」と指摘した。