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北朝鮮は世界でも類を見ない、移動の自由が厳しく制限された国だ。登録した居住地を離れ、市や郡の境界線を越えるには旅行証という国内パスポートを申請しなければならない。また、宿泊するには面倒な宿泊登録が求められる。つまり、軍入隊、大学進学などの特別な理由がない限りは、生まれ育った地域に一生縛り付けられ、他の地域を見る機会が与えられないほどだった。

しかし、市場経済化の進展に伴い、遠距離の移動が増えた。旅行証がなくとも哨所(検問所)でワイロを支払えば通過できるようになり、哨所周辺には、円滑な通過を手助けることで手数料を得るブローカーもいるほどだ。

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そんな乱れきった国内移動統制を再び強化する方針が示された。

デイリーNKの内部情報筋によると、中国国境に接した平安北道(ピョンアンブクト)、慈江道(チャガンド)、両江道(リャンガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の4道に対して今月7日、中央党(朝鮮労働党中央委員会)、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)、社会安全省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)の共同指示文が下された。その骨子は「国境沿線(沿い)の住民は、居住地を4時間以上離れる場合には、無条件で人民班長(町内会長)に報告しなければならない」というものだ。

報告の際には、誰がどういう理由で何時にどこに行くのか、どういう交通手段を使うのか、市、郡、道の境界外に行くのか内部での移動なのか、いつ帰宅するのかなど、詳細な行動計画の提出が求められる。「ここまで事細かく報告を求められるのは初めてのこと」だと情報筋は語っている。

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以前にも、外出時には人民班長への報告が必要だったが、帰宅の翌日でも問題なかった。今回の指示では、時間帯を問わず当日中の報告が求められ、人民班長も住民が本当に帰ってきたのか目視で確認することが求められる。

また、人民班長は洞(町内)担当の安全員(警察官)に、安全員は分駐所(派出所)へ、分駐所は市、郡、区域の安全部(警察署)に、報告する体系になっている。さらに、人民班長は保衛員(秘密警察)を経て、市、郡、区域の保衛部への報告も行うことになっている。

安全部の捜査課と保衛部の反探課(スパイ担当部署)は、報告を受けた住民の移動を帳簿に記録するための指導員を置き、移動に関する管理を徹底する。

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それだけではない。居住地に登録している人以外の人を泊める場合に求められる宿泊登録の体系も変わり、宿泊登録台帳に名前、年齢、滞在期間、旅行証の承認番号を記録するだけだったのが、列車やバスの切符、車のナンバー、免許証番号などの画像を撮って、台帳に添付することとなった。

また、3日以上滞在する場合には、人民班長や安全員から確認を受ける必要があり、また、24時間以上居場所がわからない場合、人民班長は即時毛安全部に通報しなければならず、怠った場合には処罰の対象とするという。

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システムの変更点はまだある。分駐所で発行してもらった「宿泊登録確認書」と旅行証に承認の印鑑がなければ、24時間以内に無条件でその地域を離れなければならないというものだ。書類や印鑑に不備があったり、期間を延長する場合は、タバコなどのワイロを掴ませれば問題なく揉み消せたが、問題があれば罰金を払わされ、一定期間旅行証の発行が制限される。

いずれも行方不明者、居住地離脱者、宿泊登録をせずに滞在している者をすべて把握し、脱北や密輸などの違法行為を効果的に防ぐためのものだ。

しかし、命令が下された直後は厳しく対応するものの、しばらくすれば骨抜きにされるのが北朝鮮の常。このようなシステムがいつまで働くかは不透明だ。