「とても住めたもんじゃない」北朝鮮国民が”金正恩住宅”を酷評

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北朝鮮にとって2020年は、台風の「当たり年」だった。4号(ハグピット)、8号(バービー)、9号(メイサーク)、10月(ハイシェン)の4つの台風が上陸または影響し、各地で甚大な被害が発生した。

金正恩総書記は被災地を訪れ、援助物資を送り、平壌の党員1万2000人を派遣して災害復旧、復興住宅の建設に当たらせるなど、様々な対応に出た。

黄海北道(ファンヘブクト)の銀波(ウンパ)郡は、金正恩氏が直接視察に訪れた被災地で、最も復興が進んでいても良いはずだが、そうはなっていないようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

(参考記事:被災地支援に入った最精鋭党員を平壌から追放した当局の意図

現地の情報筋は、郡内では依然として住む家がなく、託児所、幼稚園、金日成ー金正日研究室などで寝泊まりして、厳しい寒さに耐えている人が多いと伝えた。

鳳山(ポンサン)、麟山(リンサン)、瑞興(ソフン)、平山(ピョンサン)など、郡内各地では、昨年の台風8号で数千戸の住宅が浸水し、全壊または半壊の被害を受けた。現地を訪れた金正恩氏は、新しい家を早急に建てて、住民がもとの生活に戻れるようにせよと指示を下した。

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指示に基づいて当局は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士や突撃隊(半強制の建設ボランティア)を集中的に投入し、住宅800戸を建設。被害発生から2ヶ月後の昨年10月17日には、完工式と入居行事を大々的に行った。その様子は朝鮮中央テレビや、労働新聞など国営メディアが詳細に報じた。

ところが、またもや「速度戦」の弊害が現れてしまった。速度戦とは、生産などを計画より早期達成することを指すが、質が軽視される傾向が強い。セメントの調達が間に合わず手抜き工事が横行し、一部の家では内装工事も行われないまま完工式が行われ、がらんどうの家に入居することになった人もいる。

(参考記事:金正恩氏、日本を超えるタワーマンション建設…でもトイレ最悪で死者続出

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避難所生活から一刻も早く抜け出したい人々は、自費でトイレやキッチンを作って入居したが、暖房まで手が回らず寒さに震えている。また、手抜き工事のせいで壁にヒビが入り、雨漏りがして、セメントよりも砂が多く含まれたブロックを使ったため、屋根が崩れてしまった家すらある。「とても住めたもんじゃない」と避難所に戻ったり、親戚の家で避難を続けている人もいる。

(参考記事:タワマン大好き金正恩、そのしわ寄せで国民は「土の家」に住む

家に問題があるからと、不平不満を口にすることは許されない。金正恩氏からの「贈り物」として提供された住宅にケチをつけようものなら、政治犯と見なされかねない。

2016年の北東部の羅先(ラソン)での水害後に被災者に与えられた家は、手抜き工事であっても、金正恩氏に歯向かうことになりかねないと修理すらはばかられる状況だったが、今では修理しても問題ないとされているようだ。

(参考記事:北朝鮮、被災者向け住宅を修理できない訳

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また、プロパガンダ報道には金正恩氏からテレビを贈られた住民が登場したが、実際に配られたのは数台で、現物を見たことがないという人がほとんどだ。

江原道(カンウォンド)の被災地でも、状況は似たりよったりだ。現地の情報筋によると、台風の被害を受けた金化(キムファ)でも、金正恩氏の指示に基づいて住宅が建てられることになり、住民は期待しつつ農場の宣伝室や企業所の会館などを利用した避難所で寝泊まりする厳しい避難生活に耐えていた。しかし冬になっても一部しか完成せず、未だに避難所で寒さに震えている人が多いとのことだ。

当局は、住宅完成まで2〜3ヶ月かかるとして、贈り物住宅入舎(入居)証と、金正恩氏の贈り物リストを配布したが、メディアに出演した人以外は、未だに何ももらえていない。また、完成した一部の家も、水道、電気がなく、壁と天井からの雨漏りがひどく、修理のせいで普段の仕事に支障をきたす有様だ。

ちなみに贈り物リストには、テレビ、布団、タンス、キッチン用品、アルミ釜、輸入米25キロ、食用油5キロなどがあるが、いずれも絵に描いた餅だ。