韓国統一省の集計によると、北朝鮮から脱北して韓国に入国した人の数は、2001年には1043人だったのが、2009年には2914人まで増加した。しかし、金正恩氏が政権の座についてから1000人台まで減少し、2019年には1047人、昨年はわずか229人と激減した。
その一因とされているのが、国境警備の強化だ。昨年1月からは新型コロナウイルスの国内流入を防ぐために今までにない厳重な警備となっている。
(参考記事:韓国入りの脱北者、昨年は229人…前年の5分の1)そんな中でも、脱北の試みは続いている。年明け早々、東海岸の港から船に乗って韓国を目指した家族がいた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、今年1月のある凪の日、1隻の漁船が、船長とその妻、息子、20代の船員4人の合計7人を載せて清津(チョンジン)港を出港した。
船が沖に出たところで、船長は息子と船員にこう打ち明けた。「南朝鮮(韓国)に行くつもりだ」と。実は妻以外はこの脱北計画を知らされていなかったのだ。2人の説得に、息子と船員は首を縦に振った。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面船には充分な食糧と燃料が積まれ、船長は韓国までの航路をあらかじめよく調べるなど、用意周到に脱北計画を進めていたのだった。
警備艇に見つからないよう、7人は交代で寝ずの番に立った。そして、北方限界線(海上の軍事境界線)付近までたどり着いたが、そこを越える直前に予想外のアクシデントが発生した。
警備艇に見つかった場合に備えて、皆がライフジャケットを来て海に飛び込む準備までしていたが、エンジンが故障してしまったのだ。大慌てで修理にあたったが、北朝鮮の警備艇が接近してきていることに誰も気づかなかった。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面気づいたときにはすでに遅し。7人は逮捕され、元いた清津に連行、咸鏡北道保衛部(秘密警察)に身柄を引き渡された。事件は中央に報告され、全員が管理所(政治犯収容所)送りにされるものと見られている。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
昨年3月に国境を超えて中国経由で韓国を目指そうとした一家3人が、事前に計画を察知され逮捕、5ヶ月もの取り調べを受けた上で、管理所送りとなっている。
(参考記事:韓国目指した北朝鮮の一家3人、逮捕され強制収容所送りに)人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面
このニュースが市内に広がってようやく、船員4人の家族は脱北未遂のことを知り、涙に暮れているという。政治犯に対して連座制が適用される北朝鮮は、家族も無事でいられるかわからない。
(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる)今回の脱北未遂事件を受け、国家保衛省(秘密警察)は、清津のみならず全国の水産事業所に対して出港状況の監視を強化するよう指示を下し、思想検討の実施も検討しているとのことだ。
(参考記事:「海水でコロナに感染する?」金正恩の出漁禁止命令で食糧難が加重)