新型コロナウイルスに感染した可能性のある脱北者が再入国したことを受けて、北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)と三池淵(サムジヨン)に出されていた封鎖令が今月中旬に解除されていたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
先月20日に、女性2人が三池淵市の胞胎里(ポテリ)を流れる鴨緑江を渡り密入国しようとして逮捕された。また、先月24日にも別の女性が密入国を図り逮捕されている。うちひとりは、中国で新型コロナウイルスの陽性の判定を受けていた。これを受けて、三池淵と恵山が先月27日午後12時から完全封鎖状態に入っていた。
(参考記事:「死ぬなら故郷で」…北朝鮮「中国で陽性判定」の女性を銃殺か)中央党(朝鮮労働党中央委員会)と中央防疫委員会の決定に基づき、道党(朝鮮労働党両江道委員会)は、都市封鎖の解除を行った。三池淵は14日、恵山は17日付で施行された。
両都市を結ぶ道路は、梅雨の長雨と台風による山崩れ、道路流出で通行止めになっていたが、解除を控えて復旧作業が行われた。まずは金正恩党委員長が利用する1号道路の復旧工事が行われた。
三池淵の特閣(金正恩氏の別荘)の補修、拡張工事を行う中央党の第1旅団3個大隊が三池淵から恵山に向かって、国境警備隊と軍の第7軍団が逆の方向に向かって復旧工事を進め、工事は10日から始まり、13日に完了した。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面一方、一般市民が利用する未舗装道路は未だに流出した箇所の復旧が終わず、封鎖が解除された14日以降もしばらくの間は三池淵で孤立した状況が続いていた。
この道は車がすれ違えるほどの広さがあったが、山崩れによる被害がひどく、中央党第1旅団、国境警備隊、第7軍団がなんとか通行できる程度に仮復旧させて、完全復旧は両江道当局が行うことになった。道は建設突撃隊(半強制の建設ボランティア)や道内の機関、企業所、朝鮮社会主義女性同盟などに区間を割り当て工事をさせ、今月中に復旧させるように指示を出している。
両江道は元々道路網が貧弱で、状態も悪く、交通事故が多発している地域だ。2018年3月には、各地で交通事故が相次ぎ、1日で300人が亡くなる事態となった。
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迂回路もなく孤立状態を強いられている人々の間では不安が広がっている。
「道が山崩れですべて塞がれたが、このまま閉じ込められるのではないか」
「両江道病院に搬送しなければならない救急患者がいても、党がヘリコプターを飛ばしてくれる(ほどの慶事の)三つ子の誕生とかでなければ、市の外に出られないのではないか」(三池淵市民)
情報筋は、封鎖期間中に市民30人が病気の治療を受けられなかったり、充分な食料を得られなかったりして30人が亡くなったと伝えている。
一方、17日に封鎖が解除された道庁所在地の恵山では、ようやく移動と商売ができるようになったと市民が安堵の表情を見せているが、道外とを結ぶ道路の検問は強化されている。
「市の封鎖が解除されて両江道内での人と物資の移動(制限)は緩和されたが、国の承認なしに道の境界線を越えることについて、哨所(検問所)で厳しく取り締まっている」(情報筋)
既存の保衛部(秘密警察)管轄の10号哨所に加え、防疫哨所も、人と物の移動を制限し、特に中国語のラベルの付いた食品や工業製品が見つかれば無条件で没収しているとのことだ。