先月、各国で飛び交った金正恩党委員長の「死亡説」や「重体説」は、中国との国境を越えて北朝鮮にも流れ込んだ。
金正恩氏が順川(スンチョン)燐酸肥料工場の竣工式(1日)に姿を現したことで「死亡説」は消えたものの、このときのニュース映像で同氏の歩き方が不自然だったことなどから、健康に異常があるのではないかとの説は現地で囁かれ続けている。
デイリーNKの現地情報筋は「人々は皆(金正恩氏が)太り過ぎであまり歩けない様子を少なからず見てきただけに、足の手術をしたのではないか、といった推測をしている。また『痩せるために運動をしていたが無理がたたり、ちょっと休んでいたのだろう』などと、様々な噂が出回っている」と話す。
北朝鮮当局は、金氏一族に関するこうした噂が広がるのを防ぐため、住民講演会などを開いて「最高尊厳(金正恩氏)への冒とくは許されない」などと恫喝し、ひどい場合には見せしめのための公開処刑さえ行ってきた。
(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面しかし今回は、やはり中国から流入した金正恩氏の死亡を伝えるニュースのフェイク映像については神経を尖らせているものの、噂そのものに対する警告は行われていないという。金正恩氏は心臓に何らかの問題を抱えている可能性が高いのだが、大事に至っていないことから来る余裕だろうか。
その一方、中国キャリアの携帯電話を使い、海外と違法に連絡を取り合う行為については厳しい取り締まりを行っている。
「少し前にも、山の中で電話していた人が捕まったのだが、家族たちは本人が『見せしめ』にされはしないか戦々恐々としている」(情報筋)
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面かつても今も、世界で最も情報統制の厳しい国として知られる北朝鮮だが、すでに外部情報の国内への流入量は相当な規模になっており、当局もお手上げ状態だ。だがその一方、諸外国に自国の内情を悟られまいと、国内情報の流出統制は諦めていない。
今回、各国メディアが金正恩氏の「死亡説」や「重体説」にきりきり舞いさせられたのも、北朝鮮国内で何が起きているのか、われわれが十分に知ることが出来ない現実が背景にある。
もしかしたら金正恩氏は、国内で自分についてどのようなことが囁かれようが、それが事実でさえなければ気にしまいと割り切っているのかもしれない。