北朝鮮軍の女性兵士部隊に最近、金正恩党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の名義による指示が初めて下されたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。
かつては、金正恩氏と金与正氏の叔母である金慶喜(キム・ギョンヒ)党部長が女性兵士部隊の監督を担っていたが、そのバトンを金与正氏が引き継いだ形だ。ロイヤルファミリー「白頭の血統」の一員として政治的権威を高めてきた金与正氏の近況を示す情報として注目される。
平安北道(ピョンアンブクト)の消息筋によると、金与正氏は今月17日、本人名義で「女性軍人の勤務生活と健康に特別に配慮し、その状況を了解(把握)すること」との指示を各部隊政治部に通達した。
その内容は、各部隊は女性のための健康器具と治療解説書を備えるようにし、また各種の婦人病の予防のため坑道内の除湿器が正常に稼働するかを随時、確認せよというものだったという。同じ女性として、女性兵士らの健康は自分が責任を持つと、積極的にアピールするものと言える。
かつてこうした問題は、金日成主席の時代には彼が直接、管理していた。一方、その息子で金正恩氏の父である金正日総書記は、妹の金慶喜氏が、あるいは高ヨンヒ夫人がこの問題を担当するようにした。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面こうした経緯を踏まえれば、金与正氏が女性兵士の後見役となるのは自然な流れだ。ただし彼女の場合、ここに至るまでのスピードが尋常ではない。金慶喜氏がこの役割を引き受けたのは彼女が51歳だった1995年のことだ。一方、金与正氏はまだ31歳であり、2014年に行われた第13期最高人民会議代議員選挙の投票時に初めて公式に登場してから、わずか5年で、自分名義の指示を軍に対して出すようになった。
情報筋によれば、軍も彼女からの指示を抵抗なく受け入れており、その内容を遂行するため最善を尽くしているもようだという。また、女性軍人たちの間ではすでに「金与正同志が金慶喜同志と平壌のお母様(高ヨンヒ夫人)の崇高な志をそのまま受け継いだ」とする歓迎の声が出ているという。
金正恩氏の身に何かあった場合、現状では金与正氏が後継者候補の筆頭だ。政治的権威を高めながら、軍の中にも何らかの足場を作ることは万一に備えは欠かせない作業だ。しかし、「女性」であることをアピールして軍内の支持を取り付けようとするなら、金与正氏には何よりも先に取り組むべきことがある。「飢え」と「性的虐待」の解消である。
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仮にそれが出来れば、金与正氏が軍だけでなく、多くの北朝鮮国民の間で人気者になれるかもしれない。