北朝鮮で「見せしめの刑」の犠牲にされた18才少女の悲劇

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国際社会の制裁により、主力輸出品の石炭、海産物などが禁輸品目となり、外貨が国内に流入しないことから不況となっている北朝鮮。市場で商売して稼ぐなけなしのカネで生計を立てていた庶民は、生活苦にあえいでいる。

そんな中、売春をしていた容疑で18歳の女子学生が逮捕される事件が起きた。当局者は、犯罪抑止に利用しようと見せしめにしているが、庶民の間からは同情の声が上がっている。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月初旬に平城(ピョンソン)で公開裁判が行われた。しょっぴかれて来たのは、18歳の女子学生だ。ただし、高級中学校(高校)に通っているのか、大学に通っているのかは定かでないとのことだ。

早くに父親を失った彼女は、母親と貧しい暮らしをしてきたが、少しでも生活の足しになればと、放課後に密かに売春を行っていたことが発覚し、逮捕された。

北朝鮮では刑法249条の1の規定により、売春行為を行っていた者は1年から5年の労働教化刑(懲役刑)が課されることになっている。また、2014年には、刑法60条「国家転覆陰謀罪」に売春も含めた。最高刑は死刑で、実際に適用された事例もある。

(参考記事:恵山で売春斡旋の男性2人、公開銃殺

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だが、死刑にされるのはよほど運が悪かったケースで、売春なら300ドル(約3万2400円)から500ドル(約5万4000円)のワイロを払えば、軽い処罰で済ませるか、その場で釈放してもらえるというのが、情報筋の説明だ。

しかし、売買春の取り締まりは、金正恩党委員長が力を入れている政策のひとつだ。摘発強化キャンペーン中にでも引っかかれば、重罰を受けることになる。そしてき北朝鮮では現在、金正恩氏肝いりの風紀取り締まり運動が続いている。

それに、この少女が売春を始めたのは、そもそも生活苦が理由だ。彼女にワイロに大金を積む余裕があるはずもなく、結局教化所(刑務所)に行くことになった。

(参考記事:「量刑はワイロで決まる」北朝鮮の常識

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彼女に対する判決について情報筋は触れていないが、どの施設に行くこととなっても、「とてもひどい」か「極めてもひどい」か、程度の差しかない。

(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態

情報筋によると、平壌、新義州などの都会で、生活苦から売春を行う女性が急増しており、中には12歳の女児が行っているケースもあるという。駅前、市場、旅館の前などで客引きを行う女性が増えたと現地の別の情報筋は述べた。

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「旅館や駅前に行くと常に売春を行う女性が10人から20人ほどいる。当局は、売春問題が深刻になったことで、7月から最近まで集中取り締まりを行ったが、女性たちは罰金を払う覚悟でまた戻ってきている」(情報筋)

このような状況を受けて、社会的にインパクトのある女子学生を選んで見せしめにしたものと思われるが、恵山市民の間では彼女への同情とともに「経済難が深刻なのだから、売春でもする他ないのでは」という声も上がっている。

公開裁判の場にいた人の中には「商売がうまく行ってないから、私も体を売ろうか」との反応を示す人もいたという。このように、北朝鮮女性の間では、売春に対する拒否感がさほど高くない。苦難の行軍を売春で生き抜いた人も多い上に、性犯罪の概念が広まっていないことも影響しているだろう。

(参考記事:北朝鮮の権力者男性は「性暴力に無感覚」の疑い