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平壌市内を一望できる北朝鮮の観光名所、チュチェ思想塔。1982年の金日成主席生誕70年を記念して建てられたもので、70歳に365日をかけた2万5550個の花崗岩が使われ、高さはてっぺんの烽火まで含めると170メートル、展望台は150メートルのところにある。デザイン的には、インドネシアの独立記念塔(モナス)や米国のワシントン記念塔との類似性を指摘されている。

平壌市内が一望できるとあって、北朝鮮国民と外国人とを問わず人気のスポットだが、あくまでも本来は最高指導者の長寿を祝う政治的モニュメントだ。それが、カネ儲けの手段として使われていると、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

このチュチェ思想塔、外国人が展望台に上る際は、エレベーター代として5ユーロ(約610円)を徴収される。一方で、北朝鮮国民なら無料で入場できることになっているが、入場は週末に限られている。

週末ともなれば、眺望を楽しみたいという人々が長蛇の列をなして入場を待つ。金正恩党委員長が政権の座について以降、市内にはプール、遊園地、レジャー施設、レストランなど家族連れで訪れるスポットが多く誕生した。それでもチュチェ思想塔の人気は不動なのだという。

「高いところから平壌市を一目で見下ろすことは、いかなる名所旧跡よりもおごそかで爽快な気分にさせてくれるので、人気が高い」(情報筋)

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(外部リンク:チュチェ思想塔からの眺望を撮影したユーチューバーIndigo Traveller氏の動画

ところが最近、チュチェ思想塔はこんなことになっている。

「週末に列に並ばずに入場したければ、2万北朝鮮ウォン(約260円)を払わなければならない」(情報筋)

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無料のはずのチュチェ思想塔だが、「列に並んで無料で観覧するなんてやってられない」(情報筋)という人が、係員にワイロを渡して入るのが習慣となってしまったというのだ。列をすっ飛ばすのは1万北朝鮮ウォン(約130円)、展望台でゆっくり見るにはさらに1万北朝鮮ウォンのワイロが必要だという。

当然、朝早くから何時間も入場を待っている人からは不満の声が上がる。実際、情報筋によれば、「チュチェ思想塔の観覧を商売にしているとの信訴が何度もなされた」という。

信訴とは不正行為の告発を意味するが、このような「有料入場事業」は相変わらず続けられているという。塔を維持管理するにはそれなりの予算が必要だという弁明が受け入れられたというのが情報筋の見立てだ。塔は政治的に極めて重要な施設なので、管理部署のトップもそれなりの地位と人脈を持った人物だろう。信訴をもみ消すことくらい朝飯前なのかもしれない。

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「貧乏人は丸1日列に並ぶ。金持ちは楽に見る。最近の(国全体の)理屈と変わりない」(情報筋)

役所での書類の発行から脱北に到るまで、北朝鮮ではありとあらゆる行為がワイロをたかるネタとなっている。司法を例に挙げると、取り調べ期間の短縮、釈放、拷問の有無、裁判での量刑、教化所(刑務所)での待遇などもワイロの額で決められてしまうくらいなので、ワイロを払って列をすっ飛ばすことくらいは序の口だ。

それもこれも、国が労働者に食べていけるだけの額の給料を支払わないことが原因だ。生きていくためには、自分の持った権限を最大限に利用してワイロをせびり取るしかないのだ。チュチェ思想塔を支えているのが、北朝鮮に蔓延る拝金主義であるというのは皮肉としか言いようがない。