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中国との国境に面した、北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)にある龍川(リョンチョン)。

この地を世界的に有名にしたのは、2004年春に起きた龍川駅爆発事故だ。貨物列車に積まれていた化学肥料(硝安)が爆発し、駅周辺の8000棟もの建物が吹き飛ばされ、1500人もの死傷者を出した大惨事だが、直後に通過予定だった金正日総書記が乗った特別列車を狙ったテロだとの説がある。

(参考記事:1500人死傷に8千棟が吹き飛ぶ…北朝鮮「謎の大爆発」事故

この地域にある10月8日鉱山は、灰芒硝(グラウバー石、グラウベライトとも)という鉱石を生産している。世界的に生産量が少なく関連技術の研究が進んでいないのだが、北朝鮮には非常に多く埋蔵されていると言われる。金正恩党委員長も施政方針演説「新年の辞」で言及し、期待をかけている。

化学工業部門では、りん酸肥料工場の建設とC1化学工業の創設を推し進め、グラウバー石工業と人造繊維工業を発展させ、現存の化学設備と技術工程を省エネ型、省力型に改造すべきです。今年、化学肥料工場をフル稼働させ、2・8ビナロン連合企業所の生産をもりたてることに国家的な力を入れなければなりません。

しかし現状では、鉱山経営は苦境にあるようだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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現地の情報筋によると、10月8日鉱山は産出した灰芒硝を市場に卸している。経営資金、従業員の食料配給などが国から得られないからだ。

灰芒硝は非常に様々な用途に使われる。水に溶かすと硫酸ナトリウムと石膏に分かれるのだが、前者は炭酸水素ナトリウム(ベーキングソーダ)、炭酸ソーダの材料となり、それらはガラス、肥料などに用いられる。

また、石膏はミキサーにかけて粉末にしてセメントとなるが、そこにラテックスを混ぜると住宅の壁に塗るプラスターという素材になる。北朝鮮では、住宅の壁を白くするのが流行しており、これが非常によく売れる。セメントなら1キロ500北朝鮮ウォン(約6.5円)にしかならないが、それをプラスターにすると1.5倍から2倍の値段で売れる。

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そんな灰芒硝だが、平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋の話によれば、「新年の辞」で語られたような化学工業の発展は期待薄だという。加工技術が立ち遅れているからだ。だからといって、世界的にも研究が進んでいないため、外国から技術を導入するわけにもいかない。

また、灰芒硝は海底から掘り出す必要があり、コスト面でも問題を抱えている。実際、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のころには、掘り出す資金が確保できず操業が止まってしまった。

再開にこぎつけたきっかけは、金正恩氏が昨年、新義州(シニジュ)を視察した際に述べた「国内で産出する原料に基づいた化学工業を発展させるには、平安北道の灰芒硝鉱山を生き返らせなければならない」という言葉だ。それなのに政府は、鉱山に対し何ら支援をしていないというのだ。

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そこで10月8日鉱山の支配人は、灰芒硝の販売利益で経営資金と労働者に配給する食料を確保した上で、国から要求されたノルマを達成するという荒業を成し遂げている。非常に優れた経営手腕の持ち主のようだ。

しかし、北朝鮮の鉱業は全体的に深刻な苦境にあえいでいる。国連安全保障理事会の決議が、北朝鮮からの鉱物資源の輸出を禁止し、販路が閉ざされてしまったからだ。

朝鮮有数の鉄鉱山、茂山(ムサン)鉱山は、昨年夏に操業をストップした。給料も食料配給ももらえなくなった労働者は、次々とヤマを離れている。中には、子どもを置き去りにするケースがあるなど、状況は極めて深刻だ。