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延坪島砲撃事件から2ヶ月も経たない1月20日、北朝鮮は軍事高位級会談を韓国に提案した。蛮行の血糊がまだ乾かない内に、血に染まった手を差し出しながら「無条件での対話」を求めた。非核化問題、天安艦撃沈事件、そして延坪島砲撃事件を含め、あらゆる軍事的な懸案事項を「虚心坦懐に話し合いたい」と身勝手なことを言っている。

もちろん、恥知らずであり、図々しいにも程がある。そんな世評を知りながら、北朝鮮はあえて会談を垂オ入れた。韓国はこれに「積極的」に応じ、早ければ2月中にも濫???ェ開催される運びである。

北朝鮮の目論見は何なのか。そして韓国はどのような思惑なのか。これを中心に分析しながら、今後の展望を占うことにする。

北朝鮮の目論見は意外と単純だ。ずばり韓国から経済援助、とくに肥料支援と食糧支援を早急に引き出すことである。それほど今の北朝鮮経済は窮迫している。

年初から物価の上昇が止まらない。春窮期(3〜4月)を迎える前、すでに1月初旬からわずか1週間で、穀物価格は40%以上も急騰した。異例の物価動向と言える。その背景には、とどまるところを知らない北朝鮮の基礎的経済条件の悪化がある。とくに外貨獲得の2本柱である鉄鉱石と石炭の対中国輸出が不振と混乱を極めている。

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一例を挙げれば、石炭の輸出は「奨励」と「禁止」を過去1年間に何度も繰り返す朝令暮改に陥った。外貨欲しさに輸出を増やせば、国内のエネルギー供給が不足して発電所や炭鉱が動かない。国内供給を増やせば、外貨が不足する。これが示すように、北朝鮮経済は完全に袋小路に入っている。設備投資の絶対的な不足が原因である。

その証拠に、世界的な米ドル安傾向にもかかわらず、北朝鮮では年初から米ドル高が急速に進行している。1月15日現在の北朝鮮ウォンとの交換比率は実勢で100ドル=340,000ウォン線を超えた。今後もドル高傾向が加速することを見越し、北朝鮮商人は一斉に商品の買いだめと売り惜しみに走り出した。これが異例の物価騰貴を招いている。

泣きっ面に蜂で、主要穀物の国際相場は最近、穀物輸出国の天候不順と投機マネーの大量流入で急上昇している。おかげで、外貨不足が深刻な北朝鮮は穀物輸入もままならない。穀物支援で唯一の頼みの綱である中国も、実態は大規模な穀物輸入国であり、価格高騰のあおりで国内需要を優先することになる。そうなれば、北朝鮮は今後、中国からの穀物支援、とくに中国で大きく不足するコメの支援は期待できなくなる。

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物価騰貴が現在の勢いで進めば、春窮期には北朝鮮住民の不満が高まって世相が騒がしくなる。それでなくても、国民は無謀な貨幣改革(デノミ政策)の痛手から立ち直れないでいる。金正恩の後継作業どころか、独裁体制そのものが大きな試練に直面しかねない。

北朝鮮当局は、今年の心配ばかりでなく、同時に来年の心配もしなければならない。遅くとも2月中に韓国から化学肥料を調達しなければ、今年の農作物への施肥にはとても間に合わない。そうなれば、穀物の増産どころか、減産を覚悟する必要が出てくる。

上記の事情を勘案すれば、来年は今年よりも大きな危機を招くことになる。そこで、北朝鮮は恥も外聞も捨て、慌てて韓国に「対話」を求めてきた。それほど北朝鮮は切羽詰まっている。

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翻って、そう考えれば考えるほど、延坪島砲撃事件は「奇妙な事件」である。経済的窮状を打開するには韓国との関係改善が不可欠なのは自明の理のはずである。それにもかかわらず、北朝鮮は無差別砲撃を加えて南北関係を破局に追いやった。自分で墓穴を掘り、今回の「対話攻勢」でも不利な立場に立つことになる。やはり砲撃事件は、対南交渉の駆け引き次元とはまったく異なる、国内政治(派閥抗争)の次元で引き起こされたと見るべきなのだろう。

しかし、たとえどのような理由であれ、北朝鮮は延坪島砲撃事件から逃れきれない。北朝鮮の犯行は誰の目にも明白である。明確な謝罪と関係者の処罰なしには、北朝鮮が喉から手が出るほど欲しい経済支援は得られない。もちろん金正日と金正恩が責任を取るわけがない。

もしも北朝鮮が会談の早期成功を望むのなら、方法はひとつしかないだろう。貨幣改革失敗で労働党幹部を粛清した時のように、誰かを「犠牲の羊」に供して責任逃れするしかない。今度は人民軍幹部の誰かが「犠牲の羊」となる。その場合、延坪島砲撃事件の動因である人民軍の内部抗争で「敗者」となった派閥から選ばれることになる。

韓国が北朝鮮の身勝手な提案に「積極的」に応じた理由も簡単である。砲撃事件に関して、北朝鮮がたとえ盗人猛々しく居直ろうが、素直に謝罪しようが、どちらに転んでも韓国に損はないからだ。北朝鮮が居直れば、韓国の国民世論はもちろん、国際世論は硬化する。

他方、北朝鮮が謝罪すれば、李明博政権にとって大きな得点になるし、何よりも謝罪そのものが再発防止措置となる。
韓国政府は、北朝鮮の窮状を見透かして、軍事高位級会談の速度をできるだけ遅い目に調節する作戦に出るだろう。そうすればするほど、会談は韓国有利に運ぶ。上述したように、時間の競争は北朝鮮が圧倒的に不利な状況だからである。

北朝鮮が砲撃事件を謝罪しなければ、体制崩壊の危機は早まる。もし謝罪すれば、独裁体制の権力国「が浮き彫りになり、今後の動向を推し量る目安となる