人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

今年、北朝鮮の独裁体制は2つの大きな試練に直面する。そして、この大試練に打ち勝てず、衰亡の道に迷い込んで抜け出せなくなるだろう。

第一の試練は「強盛大国建設」の最終年を迎えることである。つまり「政治大国」(世襲独裁)から「軍事大国」(核武装)を経て、いよいよ「経済大国」の完成年度を迎えることになる。だが、誰が見ても明らかなように、すっかり破綻しきった北朝鮮経済を残り一年で再建することなど不可能である。その証拠に、今年の「新年辞」(三社共同社説)で、北朝鮮は時代錯誤の「自力更生」を持ち出して、早々に降参の白旗を掲げている。

本来なら「改革」と「開放」の旗を掲げるべきところである。だが、いくら中国の支援と投資があっても、とても今年度中に成果は望めない。そこで、苦肉の策として、古くさい「自力更生」のボロ旗を掲げて見せた。だが、これも改革開放を目指すこと以上に実現不可能な夢物語である。

そのことを雄弁に物語るのが、2009年12月に金正日と金正恩が強行実施した無謀な「貨幣改革」(デノミ政策)である。金日成時代の配給制と指令経済への復古を試みたが、1ヶ月ももたずに大失敗した。そのせいで、北朝鮮経済は大飢饉直後の2000年水準にまで後退してしまった。この「失われた10年分」を今年1年間で取り戻すのも不可能なのが現実である。

「強盛大国が実現すれば暮らし向きは中国より良くなる」「もう一度だけ将軍様を信じて付き従おう」=。北朝鮮当局はこんな空文句と空約束を国民に振りまいてきた。その分だけ、国民の失望と不満が倍加することになる。実際、北朝鮮国民は、深まるばかりの生活難で、父子三代権力世襲で登場した金正恩を見向きもしない。
あらかじめ失敗が約束された「強盛大国建設」。いっこうに盛り上がらない金正恩への国民的関心。そんな体制末期的な閉塞感の中で、今年は北朝鮮の権力中枢での派閥闘争が熾烈化して、いよいよ最終段階に突入しそうな勢いである。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

金正日の心身の衰えは隠しきれない。たしかに、金正日は現地指導を前年の5割増しで頻繁にこなしてきた。だが、これは、ただ「生きている」ことを内外に示すことが目的にすぎない。政治的にも経済的にも、無意味というよりも有害無益なだけである。他方、後継内定者の金正恩はまだ「仮免許」で運転の練習中で、祖父(金日成)の物真似を見せて回ることだけが仕事である。

そんな「権力の空白」を埋める権力闘争が昨年から水面下で慌ただしく繰り広げられてきた。今年はそれに決着を付ける最後の年となるだろう。その主導権を握るのは「権力闘争の化身」と称される張成沢(金正日の義弟)である。

張成沢は、デノミ失敗を絶好の機会と捉えて、昨年初めに労働党内の守旧派(反張成沢派)を血の粛清で一掃した。その上で昨年9月の党代表者会を開き、守旧派の一掃で更地になった労働党に自分の城を築いた。金正恩は張成沢が城の屋上に設置した「飾り物」あるいは「避雷針」にすぎない。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

張成沢はその余勢を駆って、長年の天敵の牙城である人民軍の中に、いよいよ自分の出城を築こうとしてきた。その先兵が党代表者会で党中央軍事委員会の副委員長に大抜擢された最側近の李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長である。

だが、李英鎬が落下傘で降り立った場所は、上述した労働党の場合のように更地ではなく、張成沢に対抗する人民軍の有力者が群雄割拠する。張成沢と李英鎬は、軍実力者の激しい反発と抵抗に遭遇して苦戦を強いられ、思わぬ苦境に立っている。

昨年末に起きた韓国・延坪島の無差別砲撃事件は、両派の抗争を一時的に鎮静化させる目論見で、李英鎬一派が仕掛けたものと見て間違いない。両派はこれでいったん刀を鞘に収めた。だが、早晩、再び刀を抜いて斬り合い、雌雄を決することになるのは避けられない。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

人民軍を主戦場とする両派の合戦がどのように展開するか。これが北朝鮮問題での今年最大の論点となるだろう。