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北朝鮮の金日成主席は1974年、農業生産を増やす目的で「全国土段々畑化計画」を打ち出したが、「単純に耕作地を増やせば、生産量が増える」という生兵法だったため、著しい弊害を生んだ。

行き過ぎた段々畑の造成は、山林の破壊、自然災害(とくに水害)の多発、農業生産の減少、そしてついには1990年代の大飢饉「苦難の行軍」を招いた。国の配給システムが崩壊し、食べ物に窮した人々は、生き残るためにさらに山を切り開き、畑を作った。

それを修正するため、金正恩党委員長は2012年、朝鮮労働党の政治局会議で「10年以内に失われた山林を復旧し、全国の樹林化、原林化、果樹園化を完工させる」という計画を打ち出した。大筋としては間違っていないこの政策だが、その強引な進め方が庶民の暮らしを圧迫している。

北部山間地の両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、緑化政策の一環として当局は暖房用の薪にするために山の木を切ることを禁止した。同様の禁止令は以前から存在したが、最近になって取り締まりを強化した模様だ。

庶民はしかたなく、落ち葉をかき集めて燃料としているが、そんなもので越冬できるほど、両江道の冬は生易しいものではない。

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大寒波のさなかだった今年の1月24日の天気を見ると、三池淵(サムジヨン)の最低気温は氷点下38度、恵山(ヘサン)は氷点下30度。最高気温も氷点下20度以下に留まった。これは首都平壌や、相対的に温暖な東海岸と比べて10度から20度も低い気温だ。そんな極寒の中で、煮炊きならともかく、落ち葉で暖房を賄うのは不可能に近い。

他の地方では練炭を燃料に使うことが多いが、両江道の人々は薪にこだわる。手間がかからず、火力が強く、安価で、極寒に最適だからだ。

理由は他にもある。現地の家は、薪で暖房をするような構造になっている。当局は植林事業の一環として、各地に練炭工場を新設、増設しているが、家を改造しない限りは練炭で暖を取ることはできないのだ。

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家を改造できたとしても、練炭は無料で配給されるわけではなく、市場で買うしかない。その日暮らしを強いられている庶民にとっては、苦境に立たされている。

「寒波で凍え死ぬか、教化所(刑務所)で働かされて死ぬか、どの道死ぬしかない」(地元民)

あらゆる取り締まり権限がカネを生み出すのが今の北朝鮮だが、山を監視する山林保護員も例外ではない。彼らは、幹部からワイロを受け取り薪の切り出しを黙認するのだ。切り出した薪は市場で売り払う。それを買った庶民が、別の幹部に咎められ没収されるという笑うに笑えない事態も起きているという。

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当局は山からの薪の切り出しのみならず、庶民が山を切り開いて耕した個人耕作地を無理やり奪うという強引な策に出ている。

(参考記事:「暴動が起きても不思議じゃない」北朝鮮国民、金正恩氏の指示に抵抗

金正恩氏は庶民を痛めつける一方で、経済制裁で不足する外貨を稼ぎ出すために、山の木を切り出して中国に輸出する指示を出している。