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そして僕の番になった。「先生は私達に何か役に立つような国際的な映画雑誌を推薦できますか?」

「もちろんです。『バラエイティー』、『サイトアンドサウンド』、『フィルムコメント』等を見て下さい。メジャーな雑誌です」「先生は何を助けてくれるんですか?」「定期購読の垂オ込みについてお知らせしましょうか?」「でもこういう雑誌は、私達にとってはとても高いのです。」「それでは私が読んだ後で、あなた方に送りましょうか?」彼らはこの提案を受け入れた。

ペク先生が一言付け加えた。「バラエイティーは既に購読しています。なのでそれは必要ないです。」どうしてこのようなことが起こり得るのだろうか?チェ先生は映画輸出公社で一日中仕事をし、英語も堪能だが、『バラエティー』に関しては何も知らない。それなのにペク先生は英語を全く知らないが、その人に雑誌が配達されると? 実は北朝鮮では雑誌は読む為の物ではなく、身分を証明するためのものだったのだ。西欧の雑誌を読んでもかまわない程に地位が高い人は誰で、読めない人は誰なのかを明確に知らせるためのものだった。

そうして僕たちは主体思想の英雄が偉大な祖国を守る映画を輸出公社の大きな画面で見学した。

夕食を食べているところに、キム先生がニコラスを迎えに来た。「もう、ビデオ上演が始まるでしょう?」僕も立ち上がろうとした。「いいえ、ヨハネス先生、ソク同志はニコラス先生と二人きりで会いたいのです。多分次にビデオを見る機会があるでしょう」ニコラスは気乗りしない様子だったが、ついていくほかなかった。

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僕は部屋に帰って『プルガサリ』(1985)を見た。ペク先生は、初めこの映画のフィルムはないと言い張ったが、チェ先生がビデオを持ってきた。『プルガサリ』は偉大な指導者金正日同志が直接製作した北朝鮮版『ゴジラ』だ。『プルガサリ』は中世を時代背景にした映画で、韓国出身のシン・サンオク監督の映画だ。彼は香港で拉致された後、北朝鮮に強制的に連れられてきたと主張する人だ。驚くべきなのは僕がその映画を注文したことに対して、誰も嫌味を口にしないのだ。シン・サンオクは映画を作るやいなやヨーロッパ訪問を許可され、ウィーンの米国大使館でさっそく亡命を申請した人物である。

この北朝鮮版ゴジラは、監獄に閉じ込められた一人の年老いた鍛冶屋が食べ残した食べ物で作った小さな物体から始まる。この物体は鉄の塊を食べる事で徐々に巨大化していく。ただ、ストーリーは北朝鮮映画そのものだった。貧しい人民が封建領主に対抗し戦うのをプルガサリが助けるのだ。オリジナル『ゴジラ』を作った日本の特殊効果専門家チームがこの映画に参加したし、プルガサリの着ぐるみを着た俳優の薩摩剣八郎は、ゴジラシリーズで何度もゴジラを着た人だ。彼は本も書いた。『ゴジラの目で見た北朝鮮』。本当にB級文学の傑作品である!! この映画は字幕なしで見ても本当におもしろかった。

映画が終わるとすぐに僕は酒を買いに行き、ニコラスの部屋に行ってどんなことをしてるのか見に行った。ニコラス部屋のドアをキム先生が開いた。「あ、ヨハネス先生、何かご用ですか?」「ビデオをちょっと見ようと‥・」「どうぞ入ってきて下さい」彼は多少当惑して話した。ソク同志は小さなビューファインダーを熱心に覗き見ていたが、僕が入ってくるとすぐにやめた。「あなたは本当に才狽ェありますね。 ニコラス先生、私は初めから思っていたんですよ。本当に立派な作品です」ソク同志は私たちと酒を飲んでいたが、ビデオとは全く関係ない冗談を言いながら、「仕事がまだ残っているので・‥」と言って出て行ってしまった。おそらく僕たちに関する報告書を書こうとしたのだろう。

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キム先生は出て行く前にスイスのチョコレートとジュネーブの写真集をまとめてカバンに入れた。