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北朝鮮の内閣などの機関紙・民主朝鮮は9日、日本の「反動層」が、朝鮮半島情勢の緊張など「安保環境の変化を口実にして憲法改正の準備作業を速めている」とする論評を掲載した。

吹き飛ぶ韓国軍兵士

論評は例えば、次のように述べている。

「日本の反動層は北東アジア地域の安保地形が大きく揺れている今こそ、長い間かぶっていた平和憲法の帽子を脱ぎ捨てて戦争国家への突破口を開くことのできる絶好のチャンスだと見なしている」

全体の内容を要約すると、日本の安倍政権は米国のトランプ政権の対北圧迫に便乗して憲法改正を成し遂げようとしており、さらには朝鮮半島での戦争勃発さえも待望している――というものだ。

これが、相手にする価値もない「言いがかり」に過ぎないのは言うまでもない。しかしこの論評の、次のような言葉は見過ごすべきものではない。

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「第二の朝鮮戦争が過去のように日本に黄金の夕立をもたらすと考えるのは、愚かな妄想である。第二の朝鮮戦争は日本に黄金の夕立ではなく、核の夕立、砲火の夕立を浴せかけるであろう」

1950年6月25日から3年にわたって繰り広げられた朝鮮戦争は、日本経済が第2次世界大戦の敗北から立ち直るための特需をもたらした。しかし次に朝鮮半島で戦争が起きる時には、米軍基地のある日本も戦場となり、核攻撃の標的となるのは免れないだろう――このように言っているのだ。

現時点で、日本人はこのような脅しを真に受ける必要はまったくない。それでも、次の2点には留意しておくべきだと思われる。第一に、北朝鮮が核兵器を日本に対する「心理戦」に使い始めたということ。第二に、安倍政権の進める安保政策が、戦争のリスクを高めているのは一面において事実であるということだ。

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かつて1990年代には、北朝鮮高官が「ソウルを火の海にする」と語っただけで世界的なセンセーションを巻き起こした。今や北朝鮮は、この程度のことはしょっちゅう言っている。そして、こうした脅し文句が韓国国民の耳に馴染んでしまうと、韓国軍に対して海戦を挑んだり、韓国海軍の哨戒艦を撃沈したり、民間人も済む島しょ部に砲撃を加えたりと、軍事挑発のレベルを高めてきた。そんな中、2015年8月には北朝鮮の地雷が韓国軍兵士の身体を吹き飛ばしたことがきっかけとなり、戦争の瀬戸際まで行きかかった。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

つまり、北朝鮮の「核の脅し」は現在は口先だけだが、今後どこかの時点で、何らかの形をともなったものに化ける危険性がないとは言えないのである。

一方、安倍政権は新たな安保法制を成立させ、集団的自衛権の行使に踏み込もうとしている。そしてその具体的な形のひとつとして想定されるのが、北朝鮮が開発中の弾道ミサイル潜水艦対策である。集団的自衛権の行使に踏み込むということは、米朝関係が緊張し、金正恩氏がより極端な挑発に走った場合、自衛隊が北朝鮮の潜水艦を先制攻撃すべき状況さえ生まれかねないことを意味する。

(参考記事:いずれ来る「自衛隊が北朝鮮の潜水艦を沈める日」

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今はまだ、北朝鮮独特のレトリックを「単なるこけ脅し」だと笑っていても良い時だ。だからこそ、今まだ余裕がある時期に、北朝鮮の「核リスク」をどのようにすれば除去できるか、抜本的な方策について考え始めるべきだと思う。

(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記