金正恩氏の「恐怖政治」か、単なる「私怨」か…北朝鮮で粛清の情報

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この際、韓国側はもちろん、3人それぞれにリムジンを付けるなどして歓待した。問題は、迎えに到着したリムジンに乗る順番だった。北朝鮮は何事も「序列」を重んずる国であり、いちばん先に到着した「1号車」に乗る者が一行のうちで「最もエライ」ということになる。

崔氏と黄氏はこの「1号車」を巡り、押し合いへし合いの争奪戦を繰り広げたというのである。ちなみにこの時点では、黄氏の方が国内での序列は上であり、崔氏が挑戦を試みた形と言えた。その結果はどうだったか。黄氏が乗り込んだ「1号車」の隣の席に、崔氏が半ばむりやり同乗したという。

このようなエピソードを踏まえてみると、今回の検閲の背景には2人のライバル関係、あるいは何らかの「私怨」が作用しているとも考えられる。

では、残った金養建氏はどうしたか。何と、「2号車」をスルーして「3号車」に乗ったという。自分の立場をわきまえ、後で角が立たないようにする処世術と言えた。

金養建はその後、2015年12月29日未明に交通事故で死亡している。その際、同氏の遺体と対面した金正恩氏の表情は、ほかでは見せたことのない、本当に悲しそうな表情をしている。

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金正恩氏が「3人組」の誰を最も信頼していたのかはわからないが、金養建の死を惜しんだことだけは間違いなさそうだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記