カネで命を買わねば生き残れない…北朝鮮「兵士脱北」の裏に極限状況

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新米兵士は、面会にやって来た親からカネをもらう。そのカネで市場で薪を買って部隊に渡す。ちなみに相場は120元(約1970円)。そうすれば1週間の休暇が与えられるという仕組みだ。

兵士にとって、休暇は単なる休みではなく、生きながらえるための貴重な期間だ。衛生環境も食糧事情も悪い軍隊生活を続けていると、体調を悪化させ、最悪の場合は命すら落としかねない。だから実家に帰り、栄養を付けなければならないのだ。言い方を変えれば命をカネで買っているようなものなのだ。

この他にも、軍内では上官による暴力や性的虐待が横行している。

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さらには若者の兵役忌避による人員不足などにより、朝鮮人民軍は正規軍として機能するか疑われるほど組織が弱体化している。金正恩党委員長が核兵器開発にのめり込む背景には、もはや軍の立て直しは不可能であるとの判断があるのかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記