金正日死後、部長職は空席で3人の第一副部長が実務上のトップとして部門を束ねてきた。先述の張成沢氏も、第一副部長を務めたことがある。一時期とはいえ自らトップを務めた部門によって粛清・処刑に追い込まれる──冷徹な北朝鮮政治を象徴する機関といえるだろう。
同時に、誰がこの部門のトップかによって、金正恩体制の権力構造が見えてくるだけに注目の人事なのだ。それゆえに、北朝鮮国内で極悪幹部として知れ渡っている崔龍海氏が第一副部長ならともかく、金正日氏が務めた部長になるというのはいささか疑わしい。
そもそも金正恩氏は、崔氏を軽んじているふしがみられる。少し間抜けな話だが、2015年秋には金正恩氏がコダワリを持っていると見られる極太ズボンをめぐって、崔氏は公衆の面前で恥をかかされたという噂さえあるのだ。
金正恩氏にとって、崔氏は自分の権力を誇示できる都合のいい幹部に過ぎないと見られる。