人民軍兵士による窃盗は今に始まったことではない。国からの食糧配給がまともに行われないため、餓死を免れるために周囲の民家を襲撃するのだ。民間人からは「馬賊」「土匪」と恐れられるほどだ。国内だけでは飽き足らず、国境を越えて中国に忍び込み、強盗殺人を犯す者すらいる。
多発する兵士の犯罪に対して業を煮やした金正恩党委員長は昨年7月、「軍人が民間人の生命、財産に被害を与えたら、絶対に許さない」と指示を下したが、あまり効果が上がっていないようだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。